第三章
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「魚をくれんかのう」
「魚を?」
「そうしてくれんか」
「そう言うが」
応えつつだ、五兵衛は。
松明を出してそのうえで一太の角に一本じつ括りつけた、そうしつつそのうえで老婆に対して応えたのだ。
「これはわしの商売道具でな」
「めぐんで下さらぬか」
「都で売らねばならん」
その魚をというのだ。
「どうしてもな」
「左様か」
「銭があるなら別だが」
「銭はないのじゃ」
「なら仕方ない」
「ううむ、左様か」
「悪いがな、どうしてもというのなら」
松明は括り付け終わった、ここまでは上手くいったと内心思った。山姥は魚ばかり見て彼の動きは見ていないことも幸いした。
「帰ってくれ」
「帰らぬと言えばどうするのじゃ」
「やはり魚は渡せぬ」
「わしはどうしても魚を食いたいが」
「これはわしの商売道具だからな」
「なら仕方ない、無理にでも」
山姥がこう言うとだ、五兵衛は。
一太の背に乗った、それで彼に言った。
「思い切り走るのじゃ、いいな」
「モーーーー」
一太も応えた、そしてだった。
一太は駆けはじめた、ここで五兵衛は松明に火を点けた。すると松明は瞬く間に燃え盛ってだった。
牛の角の上で燃えてそれだけで目立った、しかもそこに牛が突進してくる。これには山姥も驚き。
無意識のうちに牛を避けた、すると五兵衛は一太にさらに走る様に言った。一太も山姥を恐れていて全速でだった。
山道を駆けていった、そうして山姥を避けてそのうえでだった。
何とか都に着いた。五兵衛と魚が入った桶を背負ったまま駆けた一太は都までほぼ休まず駆けたので都に着いた時はへとへとであった。五兵衛もそれは同じだった。
だが彼は何とか魚を売りそれで儲けた、その後は一太と共にじっくり休んでそれから若狭の方にまた行ったが。
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