第二章
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「食うのか」
「そうらしいな」
「人まで食うとは何だ」
「だから相手は化けものだぞ」
「鬼や土蜘蛛と同じだからか」
そうした化けもの達と、というのだ。
「まことに同じでか」
「人を食うのも普通だ」
「つくづく恐ろしい奴だな」
「だから山道で山姥に会ったらな」
「その時はか」
「気をつけろ、もう逃げるなり刀なり持ったりお経なりを唱えるなりしてな」
「化けものには念仏だな」
何故お経かは五兵衛にもわかった。
「後はお守りなりか」
「神様仏様にすがってだ」
「難を逃れるべきか」
「そうしろ、何ならな」
ここで漁師は五兵衛にこんなことも話した。
「木曽様みたいにしろ」
「木曽様?都まで上がった源氏のか」
「そうだ、あの方みたいにしろ」
「あの方は確か牛の角に松明を一本ずつ付けさせたな」
「そうして平家の軍勢に突っ込ませたな」
「それで戦に勝ったな」
「平家の強者達も退けたのだ」
それなとだ、漁師は話した。丁度九郎判官が都落ちして逢坂の関を抜けたかという話の頃だったのでまだこの話はよく知られていたのだ。
「それならだ」
「わしもか」
「そうしてみたらどうだ」
「それで山姥をか」
「避けたらどうだ」
出て来た時はというのだ。
「どうだ」
「そうだな、出て来た時はな」
実際にとだ、五兵衛は考える顔になってだった。
そのうえで応えた、そのうえで。
漁師から魚を持っているだけの桶全てに一杯に入れてそのうえでだった。
寺でお札を書いてもらい神社でお守りも貰った、そして小刀も買いそこから松明も買った。火打ち石はもう持っていたのでそちらの用意は必要なかった。
そこまでしてから一太と共に都に向かった、そうして若狭から近江の西に入り。
そこから都に向かおうとしたが近江から都に入るその道でだった。
よりによってその山道でだった、一人の老婆が夜道に出て来た。五兵衛はその老婆を見てすぐにわかった。
この女は山姥だ、そう思って内心身構えていたが。
まずは無視しようとしたが彼と一太の前にだった、山姥は来て笑いながら言ってきた。山の民の様な服を着ている老婆だが目だけがやけに赤い。そして口から見える歯は老婆のものとは思えないまでにしっかりしている。
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