第一章
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鬼熊
佐々木小次郎は宮本武蔵と度々因縁のある出会いをしつつ諸国を武者修行で歩いていた、その中でだった。
彼は陸中を歩いている時にある村に入った時に村人達にすがる様に言われた。
「近頃村に化けものが出て来てです」
「田畑を荒らしておりまする」
「挙句は牛や馬まで襲い攫い」
「そうして喰らっている様です」
「若し田畑の作物がなくなり」
「牛や馬もいなくなれば」
「その時はです」
自分達もというのだ、その言葉を聞いてだった。
小次郎は面長で白面の整った顔を考えさせるものにさせてこう言った。
「その化けものの話よく聞かせてくれるか」
「聞いて下さいますか」
「そうして下さいますか」
「ここに来てこの話を聞いたのも何かの縁」
それ故にというのだ。
「ならばな」
「左様ですか」
「我等の話聞いて下さいますか」
「そうして下さいますか」
「そうさせてもらう」
是非にと言うのだった。
「是非な」
「わかり申した、ではです」
「これからお話させて頂きます」
村人達は小次郎の話を聞いてだった。
彼にすがる様にしてその化けものの話をした、それは巨大な熊の化けもので人間の様に歩きそうした仕草もした。
その化けものの話を村の神社の境内で飯を馳走になりつつ聞いてだ、小次郎は村人達に対して話した。
「それは鬼熊だな」
「鬼熊?」
「それがあの化けものの名前ですか」
「うむ、年老いた熊がなる化けものだ」
小次郎は村人達に話した。
「そなた達の言う様に人里まで下りてきてな」
「田畑を荒らしてですか」
「家畜を獲っていきますか」
「そうしていきますか」
「左様、そしてやはり人も襲いかねぬ」
この心配もあるというのだ。
「そなた達の言う通りな」
「ではどうかです」
「化けものの退治をお願いします」
「お武家様だけが頼りです」
「ですから」
「飯を食わせてもらっている」
今まさにとだ、小次郎は村人達に答えた。
「ではな」
「それではですね」
「これよりですか」
「化けものが出て来たら」
「その時は」
「いや、拙者自ら出向いてだ」
そうしてとだ、小次郎は村人達に毅然として話した。
「化けものがいる山にな」
「そうしてですか」
「退治されますか」
「そうして下さるのですか」
「わしはせっかちでな」
小次郎は自分の気質は笑って話した。
「だから待つのが嫌でのう」
「だからですか」
「すぐに化けものがいる山に行かれ」
「そうしてですか」
「退治する、この刀でな」
背中に背負っているそのやけに長い刀でというのだ。
「切り捨ててみせよう」
「そうして下さいますか」
「では道案内をつけますので」
「宜しくお願いし
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