第一章
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楽しむ為に
アメリカのテキサスから来日したチャーリー=ハンセンは日々ジムで汗を流していた。職業は関西のある大学の英語の先生であり日本語も堪能でその歴史や文化にも詳しい。
長身にがっしりした逞しい紺骨瘤流のプロレスラーの様な身体、男らしいやや長方形の顔立ちに口髭のとグレーの目はまさにテキサスといった趣だ、短く刈ったくすんだ金髪もである。
その職業と似つかわしくない外見と趣味に学生達はよく彼に言っていた。
「先生はどうしてジムに通ってるんですか?」
「それも毎日」
「物凄く運動されてますよね」
「もう暇があればですよね」
「アスリート並に身体動かされてますよね」
「それはどうしてですか?」
「楽しむ為だよ」
ハンセンはいつも学生達に笑って答えた。
「日本の料理を楽しむ為に」
「だからですか」
「いつもジムで汗を流してますか」
「そうされてるんですね」
「僕はアメリカの料理は好きだよ」
アメリカ人だけあってというのだ。
「ステーキもハンバーガーもね、しかし日本に来て」
「それで、ですか」
「日本のお料理も好きになって」
「そうだよ、身体を動かすとそれだけ食べものも美味しい」
そうなることも話すのだった。
「だからいつもだよ」
「日本の料理を楽しむ為に」
「まさにその為にですか」
「いつもジムで汗を流されているんですね」
「そうなんですね」
「うん、お刺身も天婦羅もお寿司もすき焼きもおうどんも美味しいけれど」
ここでハンセンはいつもこの料理の名前を出した。
「ラーメンは特にいいね」
「あれ中華料理ですけれど」
「外国の人皆そう言いますね」
「当の中国の人達も」
「あれは日本のお料理だって」
「洋食と同じで」
「洋食は欧州から入ったものをアレンジした日本のお料理だよ」
ハンセンもこう言った。
「カレーライスもハンバーグもね」
「そうなんですね」
「どっちも日本のお料理ですか」
「そうなんですか」
「もっと言えばハンバーガーも」
誰もが認めるアメリカの料理もというのだ。
「日本のものは随分と小さいね」
「それアメリカの人皆言いますね」
「日本のハンバーガーは小さいって」
「お料理の量全体が少ないって」
「そう言われますね」
「僕も噂は聞いていたけれど実際に少ないと思ったよ」
他ならぬハンセン自身もというのだ。
「そうね」
「そうですか」
「先生もですか」
「そうなんですね」
「うん、勿論ラーメンもそうだけれど」
それでもと言うのだった。
「美味しいね」
「味は確かですか」
「ラーメンは」
「だからお好きですか」
「そう、そのラーメンを食べる為にも」
まさにその為にというのだ。
「ジムで汗を流し
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