第三章
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「本当に何でだろうな」
「四番に選ばれたか」
「それがか」
「ああ、わからないんだよ」
どうしてもというのだ。
「本当にな」
「何でだろうな」
「西本さんが四番に選んだことは」
「そのことはな」
「わからないな」
「ああ、どうしてもな」
落合自身もそうだった、だが。
西本は笑って周りに言った。
「あいつは四番の風格がある」
「全パリーグのですか」
「それがあるからですか」
「それで、ですか」
「そや、それでや」
「それ故にというのだ。
「あいつを四番にしたしそのことはな」
「間違ってない」
「そう言われますか」
「今も」
「そや、これからもな」
こう言うのだった、そしてだった。
西本は落合を四番にしたことに間違いだとしなかった、それどころか正しいと胸を張ってそれで言うのだった。
その後落合はというと。
首位打者を獲得した、それも三年連続で。それどころか二年連続三冠王を獲得もし八十年代そして九十年代前半を代表するバッターとなった。
そのことを振り返ってだ、当時彼がオールスターで四番となったことに首を傾げさせた者達は言った。
「西本さんは先見の明があったな」
「ああ、そうだよな」
「だからあの時落合を四番にしたんだな」
「落合に四番の風格がある」
「大打者のそれがあるってな」
そのことを見抜いてというのだ。
「それで四番にした」
「その時はノーヒットでもな」
「後の落合見るとな」
「流石って思えるな」
「流石西本さんだよ」
「伊達に八回も優勝させた訳じゃないな」
まさにというのだ。
「本当にな」
「あの人ならではだな」
「落合をもう見抜いていたんだな」
「リーグを代表するバッターだってな」
その時を振り返って言うのだった、だが落合は。
このことについてだ、彼自身はこんなことを言った。
「今でもあの時はわからないんだよな」
「どうしてパリーグの四番に選ばれたか」
「西本さんにですね」
「そのことが」
「結局ノーヒットだったしな」
それでというのだ。
「ちょっとな」
「わからないですか」
「どうしても」
「あの時のことは」
「本当にな、しかしな」
それでもとだ、また言う彼だった。
「西本さんも思うところがあったんだろうな、俺に」
「だからですね」
「まだ若かったけれど四番にした」
「そういうことですね」
「そうなんだろうな」
こう言うのだった。
落合は若くしてオールスターの四番になったがこの時はノーヒットだった、しかしその後の彼を思うと相応しい任命だった。そう思えるのではないだろうか。落合自身がどう思おうと。西本のその慧眼は確かであった、そう思いこの度この話をここに書いた。大監督と大打者の面白い逸話
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