第三章
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「代々」
「そうか、それで何故ここに」
「それはです」
来た目的は流石に言えない、それで侍はこう答えた。
「天下の傾奇者前田慶次殿に一度お会いしたいとです」
「思われてか」
「こちらに参上しました」
「左様か」
「前田殿は武芸が秀でておられますな」
「槍や刀、馬か」
武芸と聞いてだ、慶次はすぐにそういったものを挙げた。
「確かにな」
「以前より」
「やはりそちらは武士のお家芸であるからな」
「左様ですな、では兵法は」
「いや、わしは兵法は好かん」
慶次は笑ってこう返した。
「兵達を率いて戦うことはな」
「ではご自身が、ですか」
「左様、槍を持って馬に乗ってな」
「そうして戦われることがですか」
「好きでな」
それでというのだ。
「采配についてはな」
「お好きではないですか」
「織田家におった頃からな」
「右府様にお仕えだった頃から」
織田信長のことだ、最後の官位が右大臣だったのでその様に呼ばれているのだ。本能寺の変は十年以上前だが今でも天下の人々に言われている者だ。
「そうであった」
「では采配は」
「兵法は叔父上達の仕事じゃ」
慶次は侍に明るく笑って話した。
「政もな」
「そちらもですか」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「わしは政は全く興味がない」
「兵法とそちらは」
「それこそな」
まさにというのだ。
「興味がない」
「そうなのですか」
「学問も和歌や漢詩は好きじゃが」
それでもというのだ。
「軍記ものも。しかし政について書いておる書は」
「そうした学問はですか」
「全くな」
「されませんか」
「若い頃からな」
そうしているというのだ。
「わしは」
「そうですか」
「そして堅苦しいことも嫌いじゃ」
このこともだ、慶次は笑って話した。
「こうして戦がない時はな」
「遊郭で過ごされますか」
「それが好きじゃ、わしは戦以外では役に立たぬから」
それでと言うのだった。
「大不便者じゃ」
「不便ですか」
「不便も不便でじゃ」
「大不便者だと」
「武辺ではないぞ」
笑ってこうも言うのだった。
「わしは」
「大不便者ですか」
「そうじゃ、兵法も政も全く興味がないしのう」
こう侍に言って彼に酒や舞楽を出してもてなした、慶次の話は実に楽しく侍も楽しい時を過ごすことが出来た。
そのうえで大坂に戻り昌幸の前に参上した、すると昌幸は早速侍に対して笑ってこう問うてきた。
「わかったであろう」
「はい、確かに面白い方で」
「武芸と学問は素晴らしいな」
「ですが」
それでもとだ、侍は昌幸に話した。
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