第二章
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「お楽しみ下さい」
「では」
本間は親父の言葉に頷いた、そうしてだった。
山海の珍味を使った馳走を食べた、食材がいいだけでなく味付けも見事なものだった。本間はその馳走の後で。
湯に入った、親父は湯の場所も案内したがこの時にも言ってきた。
「心ゆくまで、です」
「お湯もですね」
「お楽しみ下さい、うちのお宿の湯は」
まさにという言葉だった。
「桃源郷です」
「桃源郷ですか」
「この世のものではないまでに」
そこまでにというのだ。
「素晴らしいものなので」
「だからですか」
「溶ける様に」
「溶ける、ですか」
「お楽しみ下さい」
「では、ただ」
本間は親父に案内されつつ言った。
「お酒のことですが」
「如何でしたか」
「食事もよかったですが」
「お酒もですか」
「素晴らしいものでしたね」
「はい、うちのお宿の自慢の一つで」
「お食事と共に」
「おもてなしのはじめで」
それでというのだ。
「そしてこれからが」
「お湯がですね」
「その中心なので」
おもてなし、この宿のというのだ。
「それなので」
「だからですね」
「堪能して下さい」
「そうさせてもらいます」
「そして」
親父はさらに言ってきた。
「桃源郷の中で」
「溶ける様にですか」
「お楽しみ下さい」
「では」
本間は親父の言葉に頷きまずは脱衣場に入った、そこは男湯だったが。
浴衣姿の艶やかな女達がいた、その女達がだった。
彼に近寄り囁く様に言ってきた。
「お待ちしていました」
「では服をお脱ぎ下さい」
「よかったらお手伝いさせてもらいます」
「あの」
服に手をかけてきた彼女達にだ、本間は戸惑いつつ尋ねた。
「貴女達は」
「この宿の者です」
「おもてなしをさせて頂きます」
「どうかご安心を」
「ですが」
こうしたことはとだ、本間は言おうとした。
「ここはそうしたお宿では」
「考えられることはありません」
二十代半ばと思われる長い黒髪の妖艶な女が耳元でささやいてきた。
「そうしたことは」
「ですが」
「これもおもてなしです」
こう囁くのだった。
「そう思われて下さい」
「そうですか」
「それに」
「それにとは」
「私達も得られるものがあるのですから」
「得られるもの」
「それは後々わかります」
「ではです」
今度は短い黒髪の優し気な小柄な女が囁いてきた。
「服をお脱ぎ下さい」
「そうしてですね」
「お湯に」
風呂場にというのだ、美女達は自分達で本間の服を脱がせ。
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