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一貫小僧
第四章

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「今のは」
「間違いないな」
 昭夫もこう答えた。
「消えたしな」
「小人だったしな」
「あれが一貫小僧だな」
「そうだな」
「本当にいたんだな」
「まだ」
「まさかな」
 昭夫は澄夫に首を少し傾げてから述べた。
「本当にいるなんてな」
「まだ」
「いや、妖怪っているんだな」
「実際にな」
「それも今な」
「僕もまさかと思っているけれど」
「あっさり会ってあっさり消えたけれどな」
 これはとだ、昭夫は澄夫に話した。
「それがだよな」
「うん、祖父ちゃんの言ってた通りだよ」
「そうだな、いや本当にな」
「今のことはだね」
「色々面白いな、しかしな」
「しかし?」
「妖怪がいて見て話もしたしな」
 それでというのだ。
「姿も消えたしな」
「これ以上ここにいても仕方ないね」
「ああ、じゃあ家に戻るか」
「そうしようか」
「家に帰ったら風呂晩飯食って」
 そしてとだ、昭夫は澄夫にあらためて話した。
「そしてな」
「そのうえでだね」
「飲むか」
「うん、鳥取の酒をね」
「広島でも結構飲んでるだろ」
「いや、最近ビールばかりだよ」
 澄夫は昭夫に笑って答えた。
「広島だと」
「そっちか」
「うん、最近はね」
「それはまたどうしてだよ」
「そっちの方が好きになってね」
 つまり舌の問題だというのだ。
「それでだよ」
「そうか、じゃあビールにするか?」
「よかったらね」
「そっち出すな、しかしな」
 昭夫は澄夫と話す中であらためて言った。
「妖怪っているんだな」
「実際にね」
「今もな、何でいるかとかわからなくてもな」
「いることは確かだね」
「そうだな、じゃあな」
「戻ろうか」
「飛ばすな、帰りも」
 昭夫は澄夫に笑って応えてだった、即座に。
 軽トラのエンジンを入れて自分で言った通りにスピードを出した、そうして家に戻って後は彼が言った通りに澄夫と共に過ごした。妖怪のことと鳥取や広島のことを話しながら飲むビールは実に美味かった。


一貫小僧   完


                     2020・1・15
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