第二章
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「ですからあちらに赴任されても」
「ミソカヨーイのことはですか」
「怯えることなく」
それでというのだ。
「行かれていいです、ただ」
「ただ?」
「後ろから呼び掛けられますが」
そのミソカヨーイにというのだ。
「振り返っているかどうか確かめようとしても」
「それでもですか」
「その時だけは首が回らなくなるとか」
「それで妖怪の姿は見えませぬか」
「ミソカヨーイのそれは」
「そう聞いています」
「左様ですか、首が回らなくなる」
無意識のうちにだった、小野田は。
自分の首に右手を当てた、そのうえで話した。
「それはまた」
「そうした妖怪ということで」
「頭に入れておけばいいですか」
「まことに害はないので」
それでというのだ。
「心配は無用です」
「それでは」
「はい、そういうことで」
こうしたことを話してだった、そうして。
小野田は長野県のある署に署長として入った、平和な場所であったので特に騒ぎもなく仕事自体はつつがなかった。
だが大晦日にだった、長野に借りた家の傍の山にだった。
樵達が入っているのを見た、それで彼は樵達のところに行って尋ねた。
「何処に行くのか」
「はい、山に」
「山に入ってです」
「少し薪を取りに行きます」
「正月の分まで」
「いいのか、この辺りでは」
小野田はどうかという顔で言った。
「この日に山に入るとだ」
「ミソカヨーイですね」
「あの妖怪が出ますね」
「そうですね」
「そう聞いているが」
実際にというのだ。
「いいのか」
「はい、もうそれはです」
「わかっていて入ります」
「わし等にしても」
「そうします」
「後ろから呼び掛けられてだ」
そしてとだ、小野田は樵達にさらに話した。
「そしてだ」
「振り返ろうとするとですね」
「その時だけ首が回らなくなって」
「それで、ですよね」
「後ろにいる筈の妖怪の姿が見えないですね」
「そう聞いているが」
こう樵達に尋ねるのだった。
「それでもか」
「はい、別に仕事の邪魔はされないので」
「大晦日にまで山に入るなっていう戒めなのは聞いています」
「そのことはわし等も」
「そうしてますけれど」
「それでもか、山に入るのか」
小野田は今度は怪訝な顔になって述べた。
「いいのか」
「戒めなのはわかってますけれど」
「それでもです」
「正直正月の薪がありますから」
「薪はどうしても必要ですからね」
「どうしてもです」
「暮らしがあるからか、それに流石にな」
小野田はこうも言った。
「正月まで仕事はな」
「流石に、それは憚れますからね」
「正月は三日の間休むものですから」
「わし等もそれはわかってますから」
「ですから」
「
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