『懐かしき部屋で』
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すべてが片付き、誠には暫くの休暇を与えたらしい。
組長の部屋...何も変わってない。色んなことが一気に蘇り、過去に戻ったかのような錯覚に陥る。
2人で話す時の、いつもの席に自然と座る。組長がグラスにドライを注いだ。
『ありがとぉ...』
沈黙が痛い。
ドライをイッキ飲みした。
空いたグラスに、すかさず静かに注ぐ組長が話し出した。厳つい顔に似合わず、哀しい目をしていた。
『零、施設が変わって、そこを出た時、また違う施設に入った時、そこを出る為に必死になった末、MJに行った時、夜の世界に入った時...いつオマエから連絡が来るか待っとったんや。
オマエが何処で何してるか、元気にしてるか、また大変な目に遭ってないか...ずっとずっと見守ってきたんや。
だからオマエがどんなとこに身を置いてても、どうにかしようと足掻いてるうちは手出しせなんだんや。
オマエが誰とどういう関係なんか、海斗や怜の事も、事件の全貌も、オマエの人生を全部ひっくるめて解っとるつもりや。
連絡してこんかった理由もオマエのことやから解る。
でもな、もうええんちゃうか?あかんか?無理なんか?して欲しい事なんかない。娘の無事を祈るんが父親の役目やろ?此処に戻って来てくれ』
知ってる...気付いてたよ。組長が、誰かを通して零の事見ててくれてるって、なんとなく感じてた。
それに、組長は濁してるけど、あの時...怜が死んでるのを見て、どうしようもなく死にたくなって...銃口を頭に当てた時、タイミング悪く止めに入って叱ってたのは組長だった筈。
あまりにも正気を失ってたから気づいてないと思ってるんかな?
今迄に無いくらいに叱りつけて銃を此の手から奪った後、すぐに姿を消したけど...間違いなく組長だった筈。
突っ込まん方がええんかな?気づいてないと思ってるならその方がええんかな?
頭の中でぐるぐる言葉が回るだけで、何一つ組長には伝わってない。言葉になってない。だって、もう前みたいに思てること言えん。
どんな状況か解ってるなら尚更、戻って来てくれとかおかしいやん。
甘えれるわけ無い。今甘えたら、組長を地獄に堕とすのは確実。
そんなこと出来るわけない。
どう返したらいいか悩んで、またドライをイッキ飲みした。
グラスを置いて、組長の表情を見ようとしたら目が合った。
何故か急に熱くなって目を背けた。
でも、ハッとして背けた目を戻した。そしたら組長が落ち込んでた...。
『ごめんなさい...』
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