戦姫絶唱シンフォギアG
第1楽章〜黒の装者達〜
第3節「ガングニールの乙女」
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少しまともだったかもしれないわね」
翼に視線を返すマリアの目には一瞬、深い憂いが見えた気がした。
「……マリア・カデンツァヴナ・イヴ、貴様はいったい──?」
「……そうね。そろそろ頃合いかしら」
マリアはマイクスタンドをクルクルと器用に回すと、視線をカメラに向けて叫んだ。
「私達は、ノイズを操る力を以てして、この星の全ての国家に要求するッ!」
「世界を敵に回しての口上?これはまるで──宣戦布告ッ!?」
マリアの口から出た予想外の言葉に、翼は驚愕する。
だが、翼の……そして、特異災害対策機動部二課の驚愕は、もっと大きなものとなる。
「──そして……ッ!」
マイクスタンドを天高く放り投げると、マリアは──何処か聞き覚えのあるフレーズを口ずさんだ。
「──Granzizel bilfen gungnir zizzl──」
次の瞬間、マリアの衣装の襟元で煌めいたのは、見慣れたペンダント……シンフォギアのコンバーターユニットであった。
「まさか──聖詠……ッ!?」
ff
「この波形パターン、まさか!?」
ライブ会場から検出されたアウフヴァッヘン波形。
それを本部のデータと照合していた藤尭は、度肝を抜かれていた。
何故なら、その波形パターンは彼らもよく知っているものと完全に同一だったのだ。
モニターに表示されたその名前に、弦十郎は思わず叫んでいた。
そのギアの識別名、その聖遺物の名は──。
【GUNGNIR】
「──ガングニールだとぉ!?」
ff
それは、形状こそ翼が知っているどちらとも異なっていたが、特徴は同一のものであった。
シンフォギアは装着者に合わせて形を変える。
ガングニールの先代装者である天羽奏と、響が纏う今のガングニールの形も、特徴こそ近いが形状は全く違う物だ。
奏と響、二人のガングニールとの大きな違いを挙げるとすれば……そのガングニールは、全体的に黒かった。
奏のガングニールは、今の響より黒の比率こそ多めであったが、それでもここまでではなかった。
マリアのガングニールのカラーリングは、黒字にオレンジを差した。そういった方が適切だろう。
そして、それ以上に目立つのは彼女の身体を覆う程の、大きな黒いマントだ。
もう一つの、漆黒のガングニールを纏ったマリアは落下してきたマイクスタンドを受け止め、改めて名乗りを上げた。
二課の面々の耳に懐かしい、三ヶ月前にこの世を去った彼女の名を……。
「私は……私達は“フィーネ”。終わりの名を持つ者だッ!」
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