第95話 賊に身を落とした者の末路
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
かだか、子供一人。その子供は孤児なのでしょう。天涯孤独の身の上なら、その死を悼む者もいないと思います。可哀想ですが、その子供には北郷共々死んで貰いましょう」
人質の子供への感情はまるで無いかのように、淡々と言いました。
なんて女なんでしょう。
孤児だろうが人です。
私は真悠の言葉が理解できません。
「その子供は必ず助け出す。この私が自ら子供を解放するように北郷を説得する」
「兄上が前面に出ては逆効果です。他の者に任せては如何です」
「駄目だ。この私が出て行く」
私は短く言うと、報告に来た兵士と共に、北郷が立て篭っている山小屋に向かいました。
これまでの経緯を見る限り、北郷を説得など誰にもできないでしょう。
他の者に任せては人質の子供が死ぬことになります。
子供を救う為に必要なことは北郷の隙を突いて、彼を確実に瞬殺する能力を持っているかどうかです。
この場で、そんな真似が出来るのは私だけです。
私なら振雷・零式を使いそれを可能にできると思います。
私は自分が手にしている双天戟を見やりました。
北郷を説得しに行く時は、これを持っていっては警戒されます。
警戒されずに近づくにはこれしかないですね。
私は自分の腰に差している短剣に手を触れました。
姉上、父上、お爺々様、ご先祖様に申し訳ありませんが、他に目立たない武器を持っていません。
皆、子供の命を救う為なら、許してくれるでしょう。
家宝の短剣を失うことになるとは・・・・・・。
「近寄るんじゃねぇ! このガキがどうなってもいいのか!」
私が一人で山小屋の近づくと、子供を盾のようにして、北郷が戸口に姿を現しました。
彼は私を睨み10歳位の子供に刃こぼれした剣を突きつけています。
真悠と兵士達には北郷を刺激しないように、距離を取って山小屋の周囲を包囲するように布陣させています。
彼らには私が合図をするまで、一切手出しをするなと厳命してあります。
「大人しく子供を解放しろ。北郷、どのみちお前がここから生きて逃げ仰せることはない。死に際位、人として正しいことをしろ」
私は態と彼の気持ちを逆撫でするように言いました。
子供を救い出すことが一番重要ですが、可能であれば真悠の逃亡幇助の証拠を手に入れたいです。
それが無理ならば、子供の命を優先します。
その為には彼と話をしなければいけません。
私は彼との会話の糸口を見つけようと、彼を凝視して違和感を覚えていました。
彼は右目を隠すように、頭にボロ布を巻いています。
そう言えば、真悠は彼に手傷を負わせたと言っていました。
その時の傷でしょうか?
「北郷、右目を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ