第五十六話 波を掻き分けて
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色だった。
学院を卒業した後、トリステイン社会は何もかも変わっていた。
魔法学院という一種の閉鎖された環境で過ごした為、世間に出た卒業生達が昨日まで正しいと信じていた貴族像は、内乱後に様変わりしていて所々で問題を起こした。
王太子妃の姉という立場のせいか、『不甲斐ない姿は見せられない』という意気込みと、世間に取り残されたカルチャーショックとも板ばさみに、エレオノールは耐えられなくなった。
そんな、逃げ込む先も知らない、世間知らずのエレオノールは、マクシミリアンとの酒盛りにおいて『酒』に出会ってしまった。
「だぁぁぁかぁぁぁらっ! このまま家にいらら(いたら)私ゃらめ(駄目)になると思ったんれふよぉぉ!」
エレオノールは、早々に『出来上がって』しまった!
「なるほど、それで義姉上はベルギカ号に乗ったのですね」
酔っ払い相手の対応は、聞き手に回るのが基本だ。
「今までしゃんじゃん(散々)ムチでビシバシ叩いて、貴族らしい貴族に私を教育してきたのに、それが無駄だったのよぉ〜! だからお母しゃまには、何も言わじゅに来たのよぉーーー!!」
遅い反抗期も、家出の動機付けに作用したようだ。
「それは……大変でしたね」
「そぉ〜でしょ〜? ウフ、ウフフフフフ」
今度、エレオノールは楽しそうになり、ウィスキーのライム割りを傾けた。
「それもこれも、男の連中がしっかりしないから私が苦労するにょよ! ヴウウウゥゥッ!」
今度は、男に責任転嫁して泣き始めた。獣の様な泣き声だった。
(なんと言うか、男運の悪い人だな。後、酒癖も)
内心呆れて、マクシミリアンはリキュールを傾けた。
「そこの執事! もう一杯注ぎなさい」
「……あぁ〜、セバスチャン。義姉上にもう一杯」
「ウィ、殿下……どうぞ、ミス」
「うふん、これこれ」
エレオノールは、新しく注いでもらった杯をグビグビ呷った。
(うわぁ……)
この有様では、男運だけの問題ではない……とマクシミリアンは思った。
「義姉上、大丈夫ですか?」
「らいじょーぶ(大丈夫)」
「何処まれ話したっけ? ……えぇ〜っと、そう! そこれ、思ったのれすよ! 男にかまけるより仕事に生きりゅ女ににゃるって!」
「そうなんですかぁ……」
「この旅で、私は変わるのよぉーーーーーっ!!」
「はいはい」
相槌をうって話をエレオノールに合わせた。
(残念な美人という奴か。勿体無いなぁ)
カトレアに送った手紙には、エレオノールの事は書いておいた。
告げ口するようで気が引けたが、書かない訳にも行かなかった。
「う〜ん」
そうしている内にエレオノールは
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