第三章
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「幸せにならないといけないから」
「そうね、人も犬も」
「どんな生きものも、だからグレッグもね」
「幸せになってもらうのね」
「これからね」
こう言ってだった、二人はグレッグにご飯とお水をあげてトイレの処理もしながら笑顔で優しい声をかけ続けた。すると。
グレッグは次第に部屋の隅から出て歩く様になった、彼がいる部屋だけでなく家中でそうする様になってきた、それを見て。
太郎はリードを出して彼を散歩に連れて行こうとしたが。
グレッグはリードを見ると怯え切って動こうとしなくなった、太郎はその彼を見て芳恵に暗い顔で話した。
「あの人は散歩の時も酷いことをしていたみたいだね」
「そうね」
妻もそのグレッグを見て言う。
「どうやら」
「それじゃあ」
「散歩は今はね」
「止めておくのね」
「リードを見ても」
それでもというのだ。
「怖がらない様になってから」
「散歩に連れていくのね」
「そうしよう、このこともね」
「少しずつなのね」
「僕達を完全に信頼してくれる様になったら」
その時はというのだ。
「グレッグも散歩に行ってくれるよ」
「そうね、じゃあね」
「少しずつでも」
「お散歩のこともね」
「慣れていってもらいましょう」
二人でこう話してだ、そしてだった。
グレッグにさらに穏やかで優しい声と笑顔をかけていった、すると彼は二人をさらに信頼して完全に安心する様になってだった。
リードを見ても怖がらなくなり。
散歩にも行く様になった、太郎は彼を散歩に連れて行きつつ共にいる妻に話した。
「散歩にも行ける様になった」
「よかったわね」
「もう僕達を怖がらなくなったし」
それも全くである。
「本当にね」
「ここまできたわね」
「うん、どんなに怯えて心を閉ざしていても」
「誠意を以て接していけば」
「心を開いて」
そしてというのだ。
「一緒にいてくれる様になるよ」
「そうなるのね」
「そう、だからね」
「グレッグは私達に懐いてくれたわね」
「だからね」
それでというのだ。
「これからもね」
「優しく笑顔で接していけばいいね」
「ずっとね、グレッグもそれでいいよね」
「ワン」
グレッグは太郎の言葉に応え彼に顔を向けて一言鳴いた、見ればその尻尾は左右にぱたぱたと振られている。もう彼の尻尾が丸くなることはなかった。怯えることも。
慣れていけばいい 完
2020・3・28
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