暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第25話:彼は踏み出さない
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こっちチラチラ見てたし、時々携帯取り出してはカメラのレンズこっち向けようとしたりしてたし。挙句の果てには店入る前と同じ場所に立ってやがるからまさかと思って警戒したら案の定だったぜ」

 言いながら颯人は再びコネクトの魔法を使用し、現れた魔法陣にパパラッチから奪い取った携帯電話を放り込んだ。

 その様子を見ながら、奏は先程の事を思い返す。颯人からの壁ドン、それもかなり真剣な表情をした颯人からのそれを思い出し、奏は再び赤面した。もしも、もしもだ…………もしも彼からの最初の告白がこの時だったなら──────

「ん……もう大丈夫そうだな。それじゃ……って、お〜い、奏? ぼ〜っとしてどうした?」
「んえっ!? いいいいや、何でもッ!?」

 そんな事を考えていたら、安全を確認した颯人から声を掛けられ思考を現実に引き戻された。

 慌てて何でもない風を装うが、その行動は颯人にとって何よりも雄弁に奏の内心を語っているに等しかった。

 案の定彼女が何を考えていたのかを察した颯人は、小さく笑いながら彼女の顎にそっと人差し指を這わせ軽く上を向かせた。

「どうした? 流石の奏でも、ああ言うシチュエーションは恥ずかしいもんだったか? それとも…………その先の事でも考えてたのかな?」

 壁ドンの先…………それが意味することを理解し奏は脳が沸騰しそうなほど顔を赤くした。
 今の彼女が考え付く限り壁ドンの先にあるモノなど、キスしか考えつかなかったからだ。

 それを証明するかのように、颯人は上を向かせた奏の顔に徐々に自分の顔を近づけていった。

 彼が何をしようとしているのか、そんなもの子供でも分かった。

「────!?!?」

 その瞬間、奏は両目を固く閉じた。

 姿勢はそのままに、目は硬く閉じ、体は小刻みん震えている。

 それは果たして拒絶を意味しているのか、それとも──────期待しているのか。

「………………ふぅ」

 一方の颯人は、目を固く閉じ小刻みに震える奏を見て溜め息と共に肩から力を抜きフッと笑みを浮かべると、顔と指を離してそのまま右手の人差し指で彼女の額を軽く突いた。

「ん、え?」
「冗談だよ。お楽しみには、まだ早いもんな」
「え? あ────」

 柔らかな笑みと共に掛けられる颯人の言葉に、奏は何かを告げようとするが、それが告げられるより颯人の行動の方が早かった。

「そんじゃ、怪我人は大人しく帰って休ませてもらうとするかな。多分明日には回復してるだろうし。つう事で奏、また明日な」
「あ……は、颯人────」

 去り行く颯人の背に声を掛け引き留めようとする奏だったが、声を掛けた所で何と言葉を掛けるべきか迷い口を噤み上げかけた手を下ろす。

 そのまま颯人は
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