暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第25話:彼は踏み出さない
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はざっとメニュー表に目を通す。見た所、醤油・塩・味噌・豚骨と言った基本的なラーメンは揃っているし、ラーメンだけでなく餃子やチャーハンもある。
 逆にこの店特有の、言ってしまえば奇抜なものは存在しないようだ。

 普通こういう個人店は、他店との差別化を図る為に独特のメニューを載せていると思っていたのだが、ここはそう言ったもので勝負する気はないらしい。

「う〜ん…………よし! んじゃぁ醤油ラーメンに餃子のセットで!」
「やっぱな。すいませーん! Aセット二つ!」
「はーい」

 颯人が2人分の注文を店員に告げるのを眺めながら、奏はお冷の水を一口飲みながら彼の事を考えていた。

 思えば奏は颯人に助けられっぱなしだった。初めの出会いこそ最悪だったが、その後は自分で蒔いた種の回収の意味もあるが悪意ある同級生から奏を守り、同時に転校先で異性の友人が居なかった奏にとって最初の男子としての友人となり、彼女の世界に色を添えた。

 5年前は命懸けで家族を失った奏を勇気付け、2年前に至っては命を削るレベルの危険を冒して奏の命を救ってくれた。

 そして先日のクリスと透との戦闘である。

 あの戦闘で颯人は奏を(勿論響と翼もだが)庇おうとしてその身を盾にし、奏にトドメを刺そうとしたクリスに生身で挑んで返り討ちにあってしまった。

 元よりシンフォギアを纏うようになったのは、そもそもが颯人を探し助け出す為だったにも関わらず、結局彼女は彼に助けられてばかりだったのだ。

 それが堪らなく情けなくて申し訳なくて、知り合いから邪魔が入らないと言う状況が奏の心の栓を緩めていた。 

 注文を終え、自分もコップに注がれた水を口に含む颯人。その彼に、奏は万感の思いを込めた謝罪を告げた。

「颯人……」
「うん?」
「その…………ゴメン」

 突然絞り出すように告げて頭を下げた奏に、颯人は呆気に取られてきょとんとしてしまう。が、このままでは変に注目を集めていらぬ情報の拡散を招いてしまうと考え、素早く周囲を見渡して自分達に興味を向けている者がいない事確かめるとある魔法を使用した。

〈デシーブ、プリーズ〉

 颯人が魔法を使用すると、2人が座っている座席の足元に魔法陣が一瞬展開され輝くとすぐに消えた。

 これは所謂隠蔽魔法とも呼ぶべきものであり、これが展開されると魔法陣の範囲内で起こったあらゆる出来事は他者に感知されなくなる。
 ただしそれは使用する直前まで見られていないことが必要条件であり、仮にこの時2人の事を見ていた者が居た場合、その者はこの後も変わらず2人の間で行われるやり取りを知る事が出来てしまう。

 また感知できなくなるのは飽く迄も出来事だけであり、2人の存在自体は周囲から認識されている。なので、店員が注
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