暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第25話:彼は踏み出さない
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?」
「え、は? 何が?」

 出し抜けに声をかけられ出鼻を挫かれた奏は思わず面食らう。

 大胆とは、はて一体何の事なのか?

「さっきからこの近くを通ってる人達、み〜んな温かい目で俺らの事見てたぜ?」
「えっ!?」

 言われて慌てて周囲を見渡すと、今正に近くを通りかかろうとしていたと思しき女性職員が2人に温かい目を向けながらその場を立ち去っていくのが見えた。

 それを見て奏は一瞬で顔を真っ赤にした。

 この時、奏は人通りの事を完全に失念していた。

 颯人を無理矢理にでも休ませようと言う気持ちが強かったせいで忘れていたが、シミュレーションルームのすぐ近くも普通に人通りがある。そんなところでこんな事をしていては、そりゃ他の職員の目について当然だった。

 奏は慌てて颯人を引き剥がしにかかった。

「ど、退け颯人ッ!? 早くそこ退けッ!?」
「あ〜、何だか傷口が痛んできたわ〜。こりゃ下手に動くと傷口開きそうだからジッとしてた方が良さそうだわ〜」
「お、おま──!? このタイミングでいけしゃあしゃあと────!?」

 どう考えてもこの発言は嘘っぱちなのだが、さりとて彼が怪我人であることは事実なので強硬手段に出ることは出来ない。一見ふざけているように見えて、実は本当に傷口が開きそうになっている可能性もある。
 そんな彼を強引に引き剥がそうとして、本当に傷口が開いてしまっては洒落にならない。

 結局奏は、されるがままに颯人に膝枕をするしかないのだ。その事に羞恥と悔しさで顔を真っ赤にしていた。

 彼女の様子に颯人は再び笑みを溢すと、軽く呻き声を上げながら上体を起き上がらせた。

 突然起き上がった彼に、今度は困惑した奏だったがそれでも最低限彼に無理はさせまいと言う思考が働いたのか起き上がろうとする彼の体を奏は咄嗟に引き留めた。

「ちょちょ、どうした急に?」
「止めだ止め、こんな状態じゃ鍛錬もへったくれもねぇだろ? いい時間だし、飯にでも行こうぜ?」

 奏を少し遅めの昼食に誘いながら手を伸ばす颯人。その姿には無理をしている様子が感じられない。

 暫し悩む奏だったが、結局彼女はその手を取ることにした。
 実際問題、颯人に無理をさせられない以上奏には鍛錬の方法がない。一応シミュレーターを使用して投影したノイズを的にした鍛錬は出来るが、今の奏にその鍛錬はあまり効果がない。出来るのは現状維持程度であろう。

 それならいっその事、気分転換も兼ねて彼の誘いに乗るのが一番だろうと判断した。
 そうすれば少なくとも、彼が何かおかしなことを考えて変な無茶をしないか監視することは出来る。

「当然、颯人の奢りなんだよなぁ?」
「勿論。この間いい店見付けたんだ、多分奏も気に入ると思
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