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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第25話:彼は踏み出さない
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なだけだよ」
「心配?」

 奏の言葉に颯人は彼女の太腿の上で首を傾げながら先を促した。

「颯人…………無理し過ぎなんだよ。2年前だって、アタシの絶唱の負荷を全部自分に流したりして…………そりゃお陰でアタシは助かった、その事自体は感謝してるよ。でも、アタシだって颯人が思ってるのと同じくらい颯人の事が心配なんだ。どこか、遠くに行っちゃいそうで、不安なんだよ…………」
「奏…………」
「だから、頼む颯人。もうこれ以上、必要以上に無理するようなことは止めてくれ。アタシは今よりもっともっと強くなる。颯人が守らなくてもいい様に、希望でいられるように頑張る。だから颯人も、アタシの希望を絶やすようなことは止めてくれ」

 静かに、だがこれ以上ない程の必死さを感じさせる奏の懇願にも匹敵する要望。言葉の端々から彼女が心の底から颯人の事を心配し、大切に思っている事が伝わってきた。

 それを聞いて颯人は、苦笑と共に溜め息を吐いた。溜め息を苦笑を同時に吐き出す彼に奏は一瞬馬鹿にされたかと不機嫌そうな顔になる。

「ふ…………ククク」
「──んだよ? アタシ何か可笑しなこと言ったか?」

 もしヘタな回答が返ってきたら、傷口が開かないギリギリの威力の肘を傷口に叩き込んでやろうと密かに身構える奏。だが次の瞬間颯人が向けてきた顔と言葉に、奏は思わず動きを止めた。

「いや…………俺やっぱりお前の事大好きだわ」
「んなッ!? おま、またそう言う事────!?」

 何時もであればこんな事言われようものなら即行恥ずかしさのあまり手が出ていたであろうが、今の彼の顔があまりにも真剣で普段のお茶らけた感じとは違っていた為そんな気はとてもではないが起きなかった。真面目な彼の顔が直視できず、思わずそっぽを向いてしまう。

──だぁ、もう────!? ほんっと此奴の行動って全然読めない。何でアタシこんな奴を好きになっちゃったかな〜──

 思い悩む奏だったが、そんなの考えるまでも無かった。

 颯人は何時だって本気なのだ。本気で奏を想い、本気で奏を守ろうとする。一切の打算も無く、奏に対する想いだけは何時何処でも偽らないのだ。

 5年前の遺跡で、元気付けようと必死で声を掛けてくれていた時の様に…………。

 心の底から想ってくれるから、奏の心も自然とそれに答えようと思ったのだ。それが奏が彼を好いた理由だ。そう、奏は颯人の事を好いている。

 そっぽを向いていた奏だったが、好意からくる誘惑に負けてチラリと颯人の顔を覗き見てしまう。彼は未だに真剣な表情で奏の事を見ていた。

 思わずその真面目な顔に見とれてしまいそうになるが、瞬間彼の顔に何か悪戯を思いついたかのような笑みが浮かんだ。

「それにしても奏よぉ、今日はホント大胆だよな
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