暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン23 かくて語り部は神を称える
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、残念ながら今現在においてもあまり改善されているとは言えない状況が続いています。無論、我々デュエルポリスが不甲斐ないせいだと言ってしまえばそれまでの話でしょう」

 普段の彼女からは想像もつかないほど真面目かつ殊勝な話っぷりに、隣のマイクを突き出してきた張本人が目を丸くしているのが気配から伝わってきた。鼓あたりにこれを言うと鼻で笑われるのだが、彼女とて一応はいっぱしの社会人なのだが。あのアクティブニートのプー太郎はアタシのことを何だと思っていたのかという疑問は一度脇に追いやり、彼女の話に耳を傾ける老若男女の顔をぐるりと見渡す。
 決して人数が多いわけではない……少なくとも、かつて彼女のデュエルを見ようとする人々でひしめき合ったプロの舞台と比べれば。それでもこの仕事に就いて以降は久しく感じていなかった現役時代、ファンの期待を背負って戦う心地いい感覚に似たものを感じ、少し気分がよくなった。

「ですが、私は信じています。それでもデュエルモンスターズの本質は、皆が楽しめるものであると。そしてそのことを忘れない限り、必ずかつてのように世界中の人間が同じカードの元に繋がることができると。本日のデュエルフェスティバルは、その決意の一歩です。そんな小さな一歩から後に続く二歩、三歩へと踏み出せることを願って、ここに開会の言葉と代えさせていただきます……おう、こんなもんでどうだ」

 一礼、そして客席から巻き起こる拍手。柄にもない話をした反動で無性にニコチンが摂取したくなったが、さすがにこの観衆の前でおもむろに一服するほど彼女は馬鹿ではない。ここにいるのは普段彼女が相手しているどう思われようが知ったこっちゃない「BV」犯罪者ではなく堅気の人間、このデュエルフェスティバル自体がイメージアップのための仕事なのだから。喫煙者に対する昨今の風当たりの強さは、ヘビースモーカーの彼女自身が一番身に染みて知っている。

「はーい、ありがとうございました。では堅苦しい挨拶はこれまでとしまして、本日のメインイベント。いよいよ皆様お待ちかね、デュエル大会を開催いたします。まず記念すべき第一試合を飾りますのは……エントリーナンバー6番!眠りし遺物、星守る神の探究者。『考古学者』の寿(ことぶき)神助(しんすけ)さん、どうぞーっ!」

 その名を呼ばれた老爺が立ち上がると、拍手の中をおもむろに壇上へと昇り一礼する。年齢の重みを感じさせる深い皺の刻まれた顔の中にあっていかにも度の強そうな分厚いレンズの眼鏡越しに人の良さが透けて見えるような柔和な目が覗く、一見するといかにも好々爺といった風情の小柄で痩せた老人……しかしそんな寿の過去の姿を知る糸巻はもちろん、清明も一目見ただけでそれはこの老人の見掛けに過ぎないことを悟った。確かに衰えてはいるものの無駄のない付き方をした筋肉、きびき
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