ターン23 かくて語り部は神を称える
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ルを前に文学少女が精一杯の勇気を振り絞っての誘いの言葉はあっさりと空振りし、すごすごと客席へと引き下がっていく。一方で開いた口が塞がらなかったのは、別に聞き耳を立てていたつもりはないがすべて聞こえていた糸巻である。
「……アイツ、どこであんな子引っかけてきたんだ?」
この段階ですでに糸巻及び鼓のデュエルポリス組、そして八卦と清明の一般人組の間には今回のイベントについて致命的な認識のズレが生じていた。そもそも彼女は、この時点で何かおかしいと気が付くべきだったのだ。普段から彼女の後をお姉様お姉様とキラキラした目でついて回り、今回のイベントも楽しみにしていた少女の姿がまだ見えていないことに。
実は糸巻たち、いまだこの2人にはデュエルフェスティバルの裏で蠢いているテロ計画のことを伝えていない。当然一本松をはじめとする、デュエリスト襲撃事件の存在も伏せたままだ。身元を明かすものはすべて焼け落ちていたため、ニュースから彼らの名前が漏れることはない。
危ないから?プロの仕事だから?無論、それもあるだろう。しかし彼女らの心の奥底、当の本人すら気づいているか怪しいものであるその本音は、ひとえに失うことへの恐怖だった。彼女たち旧世代のプロデュエリストにとって八卦九々乃は10年以上の長きにわたり待ち望み、ようやく生まれた次世代デュエリスト希望の星だ。これ以上、デュエルモンスターズの歴史の闇に触れて欲しくない。自分たちが当たり前のように育んできた、デュエルは楽しいものであるという認識を少女の中でも少しでも強固なものにしたい。だからこそ、このデュエルフェスティバルは純粋な祭りとして受け止めてもらう必要があった。そこまではっきりとした考えがあったわけではないが、なぜ情報を秘匿していたのかを注意深く紐解いていけばその結論はそこに帰結する。
その無意識下での判断が余計に問題をこじれさせたことを彼女らが思い知るのは、もう少し後のことである。
「さ、そんなこんなでいよいよデュエルフェスティバル、開幕の時間となりましたね。本日はお日柄もよく、お集まりいただいた皆さんには感謝しかありません。まずは開会にあたりこの町の守護神、デュエルポリスは家紋町代表。糸巻太夫さんより、開会のお言葉をいただきます。ほら糸巻さん、何か喋って」
ちらりと時計を見て急に雰囲気を真面目なものに変えた清明が、さもそれっぽいセリフと共に開会の言葉を丸投げした。無駄に手際のいい動きに押し切られて突き付けられたマイクを受け取ってしまい、やむを得ず咳払いする。視界の端に捉えたしてやったりとばかりの得意げなウインクに拳を無言で握りしめながら、それでもなんとか淀みなく声を張る。
「えー……かつてあの忌まわしい事件により、デュエルモンスターズは一度は忌み嫌われる存在へと堕ちました。そしてそれは
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