ターン23 かくて語り部は神を称える
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「さあさそこ行くおにーさんおねーさん、じーちゃんばーちゃんにお子様方も。寄ってらっしゃい見てらっしゃい……デュエルフェスティバル、開幕です!」
どこまでも飛んでいけそうなほどに青い秋晴れの空に、清明の声が朗々と響く。演芸場めいた高台とそこに作られた簡易的なデュエルスペースと、全体的に野外ライブ会場めいたステージの舞台袖から糸巻は、本来この呼び込みは鳥居の役目だったんだがなと複雑な思いでそれを見つめていた。
「さあ皆様方、よくぞおいでくださいました!本日はお日柄もよく、デュエリストたちも皆とても気合が入っていることでしょう。この特別ステージをその目で見ることのできるあなた方はとても運がいい、私はそう思いますよ?」
あまり捻りがあるわけではないが、それゆえにかえって当人の興奮と熱気が伝わってくる。本来ならばこの手の口上がいくらでも湧いてくる鳥居はまさに適任だったのだが、最後の電話以降彼とはいまだに連絡が取れないままだ。
どうすっかと頭を抱えていたところに「鳥居が逃げた」と微妙にずれた話を聞きつけた清明が「んじゃ僕にやらせてー」と例によっての軽い調子で売り込みに来て、やりたいやりたいとあまりにうるさいのでよしじゃあお前何かあったら責任取れよと押し付けたのがつい昨日。完全にぶっつけ本番にしては全く恥じらいのない、クオリティに目をつむれば妙に堂に入った司会っぷりである。一応本人は当初から叩き売りなら得意だから任せて、と変な自信に満ち溢れていたのだが。
そんな絶好調の彼がふと集まってきた観客の中からある人影を見つけ、意外そうな顔になりながらも手招きした。釣られて糸巻もそちらに目をやるが、そこにいたのは彼女にとっては見知らぬ、いかにも気弱そうな眼鏡の少女。
「竹丸さん、こんにちわ。来てくれたの?お兄さん嬉しいよー」
「はい!あの、先日は本当に、本当にありがとうございました!」
糸巻も八卦の学校で起きた事件の話はある程度本人の口から聞いてはいたが、彼女は彼女でこの祭りを目的としたテロへの対策やロベルトたちのやられた事件の後処理などで忙殺されていたためあまり突っ込んだ情報までは聞いていない。犯人への尋問まで行った唯一の男である鳥居が理由は不明だがせっかく捕まえた男2人を解放してしまったため、知りたくともそれ以上どうしようもなかったということも大きい。
「それでその、私、デュエルモンスターズのルールってそんなに詳しくないんですけど……」
「ああ、大丈夫。今日はお祭り、あの時みたいなことにはならないからさ。もちろんこのゲーム自体が合う合わないはあるけど……見ててなんとなくでも面白そうだなーなんて思ってくれれば、僕も嬉しいかな」
「あ、いえ、だからその、一緒に……いえ、なんでもないです……」
悪気ゼロの爽やか営業スマイ
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