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提督はBarにいる。
艦娘とスイーツと提督と・50
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対して翔鶴は首を傾げている。

「お前らも知ってるだろ?ウチの加賀は『2人目』だって」

「あ……はい、着任したての頃に先輩方から伺いました。今鎮守府にいる加賀さんの前に、沖ノ島攻略戦で轟沈した加賀さんが居たと」

 そう。俺の経歴と心に未だ暗い影を落とす、『1人目』の加賀。そんな戦友を喪った失意のまま、沖ノ島攻略が為った直後に建造出来たのが今の加賀だ。翔鶴・瑞鶴姉妹は2人目の加賀が着任してから随分後で着任したからな、話でしか知らんのだ。

「当時赤城や蒼龍達は既に錬度が30以上でな。建造したての加賀じゃあ逆立ちしたって肩を並べて戦える様な力の差じゃ無かった」

 だからこそ、加賀は努力をした。寝る間も惜しんで身体を鍛え、艦載機の扱いを学び、赤城達に追い付こうとがむしゃらに。そうして、いつのまにか彼女は我が鎮守府の空母部隊のエースにまで上り詰めていた。

「ぶっちゃけた話、アイツの才能は並だ。お前達姉妹に比べたら平凡以下と言ってもいいかもしれん」

「そ、そうなんですか?」

「あぁ、元々航空母艦『加賀』は戦艦になる筈だった艦を空母に艦種変更した艦だからな。艦娘になったアイツも、その辺を引き摺ってるんだろう」

 戦艦として設計された艦を改装した空母と、初めから空母として設計された空母。どちらが優れているかは歴前である。その上、後者は前者で得られた経験や情報の蓄積がある上で設計されているのだから当たり前の話だろう。

「だが、アイツはそれを努力で捩じ伏せた。文字通りの血の滲む様な努力でな。だからアイツは他人に厳しく、自分にはもっと厳しい」

「その反動が提督への甘えっぷりなんですかね?」

「やかましい」

「すみません……だからこそ、加賀さんは瑞鶴に怒るんですね」

「まぁ、多少の嫉妬も含むだろうがな。瑞鶴が自分と同じだけの技術を身に付けたらその力の差は圧倒的に瑞鶴が勝るだろう」

 加賀の奴はそれを解っているから、手を抜いている瑞鶴に苛立つんだ。自分の求める物をもっているクセに、努力をしようとしない才能溢れる後輩に。

「加賀さん……」

「ま、その辺は時間が解決するか本人同士がどうにかするしかねぇやな。それより翔鶴、俺の作ったコンポートは食わんのか?」

「あ、そ、そうですねっ!頂きます……あ、美味し」

 先程まで悩み相談に忙がしかった翔鶴は初めてコンポートに手を付けて、その味に顔を綻ばせた。




「それにな、加賀の奴は少し焦ってんだよ」

「焦り……ですか?」

「あぁ……近々、赤城に第二改装が内示される」

「ッ!それは、加賀さんも?」

「あぁ、当然知ってる」

 ウチの空母機動部隊のメインは、他の鎮守府と同様に一・二・五航戦の6人だ。
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