第五十五話 ドゥカーバンクの戦い・後編その2
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トで沈む『王』に飛び乗ると、杖を振るい『ヒーリング』を唱えた。
(傷を治したからと言って、どうなるという訳でも無いが。さて、どうしたものか……)
マクシミリアンが思案していると、脳内に『王』の声が聞こえた。
『何故、助けた』
「ん? ……ああ、喋れるようになったのか」
『再び精霊の力で、お前に話しかけている』
「なるほど、先住魔法ってのは便利だ。話を戻すが、助けた理由はお前を殺しても他の海獣が、この一体の主に納まり僕達を襲う可能性があったからな、無駄な事はしたくないし、何より……話が通じると思ったからな」
『お前を洗脳、コントールする為だった』とは口が裂けても言えない。
『敵に情けを掛けられるとは……負けたな』
『王』は何か染み入るように呟いた。
「この海域の主よ、一つ取引がしたい」
『取引?』
「そうだ、我々は、この付近一帯の魚資源を目に付けている。トリステイン王国の、周辺海域での漁を認めてもらいたい」
『……認めるも何も、我々のものではない。欲しければ勝手に獲っていけば良かろう』
「ならば主よ。我々の漁と航海の安全の為に南下を控えて貰いたい。その代わり、我々は貴方達の領域には決して足を踏み入れない。不可侵条約だ」
『お前との戦いで、有力な家臣は粗方死んでしまった。回復するには数百年掛かるだろう。そして、何より……我らは負け、情けを掛けられたのだ……勝者に従おう』
「ありがとう、北海の王よ!」
こうして、トリステイン王国と北海の王との間に交わされた盟約で、ドゥカーバンク海域の安全な漁業権、航行権を得る事に成功した。
北海の王が北へと去る際に、マクシミリンに呟いた。
『お前のその精霊を殺す光、今でも恐ろしいと、この世にあってはならぬ物だと思っている。他の精霊を統べる者たちは、お前を決して許しはしなだろう』
「……」
『さらばだ精霊殺し。二度と会うことはあるまい』
北海の王は、傷ついた家臣達を引き連れ北の海へと去っていった。
交わされた盟約はマクシミリアンの死後も効果を持ち続け、北極海を本拠にする北海の王は決して南下をしようとはしなかった。そして、人類も北極海を犯すことは無く、何千年経っても、北極は聖域であり続けた。
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