六話 攻略組
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わないぞ」
虚偽ではないことを確認するとロンは渋面をつくりながら押し黙る。奇妙な沈黙がしばしの間続くが、やがてどういう考えに思い至ったのか、ロンは後ろ腰に差したダガーを引き抜き、鋭利な切っ先をシュウに向けた。武器を向けるという攻撃的なアクションにその場の緊張が急激に高まる。
「ロン!?何をするつもりだ」
「悪いが黙っていてくれシュミットさん。目的がどうだろうと俺達が前線を引っ張ってきたのは事実なんだ、黙って安全圏にいた連中に譲歩してやる義理はねぇ」
シュミットからの制止にも構わずロンはダガーと共に鋭い視線をシュウへと向けながら、強い口調で続ける。
「使えるかどうか見てやる、中層の。デュエルを受けろ、いい勝負が出来たらさっきの条件を呑んでやる」
「へえ……」
見下したような態度を消し、真剣な顔つきで決闘を申し出た男にはじめて、シュウの表情が取り繕ったものから変化する。それまでの相手を挑発するようなものとは異なった、楽しむような薄笑みに。
「それは分かりやすくていいな、受けて立とう」
「ちょ、シュウ……っ!?」
あっさりと承諾したシュウを止めようと、トールが動くが、その腕が隣のアルバにより掴まれ、逆に止められる。何故、と言いたそうに自身を止めたアルバをトールが見るが、大剣使いの少年は黙って首を振り手を離さなかった。
《聖竜連合》側の人間達はすでにロンの指示によりデュエルを行うスペースを空けるべく鉱山入口前の広場の隅に寄っていた。十分な空間が確保できたことを見て取ると、ロンはシュウの前方に立ち、メニューウィンドウを表示させる。
「初撃決着でいくぞ。……そういえば名乗ってなかったな。《聖竜連合》オフェンス隊のロンだ」
「意外に礼儀正しいな。俺はシュウ、所属は無い」
ロンがメニューを操作すると、シュウの目前にシステムメッセージが現れる。決闘申請を受諾するかという旨を尋ねるそのウィンドウから、プレイヤー間の決闘として最も一般的なスタイルである初撃決着モードを選択しYESのアイコンを押し込むシュウ。するとロンとシュウ、二人の目前に浮かぶメッセージウィンドウの表示が変化し、デュエル開始までの六十秒がカウントされ始める。
突撃槍を抜き盾を構え戦闘態勢に入るシュウと同じく、ロンも右手にダガーを構え左半身を前に出すように構える。二人の間で高まっていく緊張に周囲のプレイヤー達も息を呑み見守る中、やがてカウントがゼロになり、DUELのシステムメッセージが中空に弾けた瞬間――
「っ行くぜ!」
《聖竜連合》の短剣使い、ロンが地を蹴り、瞬く間にシュウへと迫った。
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