六話 攻略組
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「なに、あんた方が攻略組だというのは理解しているさ。だから奥の良質オブジェクトぐらいは諦めよう、だが――」
「わかった」
その言葉の終わりを待たず、相対していた男がどこか安心したようにも見える面持ちで承諾の意を表す。それに伴い《聖竜連合》の面々がざわめきだすが、男がじろりと背後に視線を飛ばすとたちまち大人しくなる。どうやら男は連合の中でもかなり立場が上の人物であるらしい。
「奥を譲ってくれるとまで言ってもらえているんだ、欲張りすぎて恨みを買うことはない。――そちらはその条件で納得してもらえるのか?」
「ああ。浅い位置のオブジェクトでもレアの確率が全く無いわけじゃない。どのみち運次第なんだ、そこは我慢するさ」
言いながらシュウが後方のキョウジらの方を見ると、彼らも了解するらしく頷きを返している。その条件は攻略組と中層プレイヤー達、双方の利害をすり合わせた妥協の限界に適うものでもあった。
そうして緊張していた事態が一応の収束を見せたところに、水を差すような声が上がった。
「待ちなよ、シュミットさん」
《聖竜連合》の内から上がったその声の主が場の視線を集めながら歩み出てくる。漆黒のライダースーツを思わせる上下一体型の革製防具に同素材製と思しきチョッキを羽織った、重装プレイヤーが多い《聖竜連合》では珍しい軽装備型の男だった。
「シュミットさん、あんた最近丸くなりすぎだよ」
「ロン、しかしな……」
シュウと対話していたシュミットという名らしい男性の横に立つと、歩み出てきた男はシュウと向き合う。背丈はお互いにほぼ変わらない程度だが男、ロンの目つきは傍目にも明らかな相手を見下すものだった。
「俺達はクリアのために、前線で戦ってる攻略組だぜ、金を蓄えることになんの悪いことがある?その金でいい装備を買い集めて俺らが強くなれば攻略も早まる、お前ら中層で遊んでる連中にとってもそれは悪くない話だろ?」
蔑みきったその発言にトール達中層プレイヤーの間に再び憤りの感情が渦巻き始め、中には殺気すら感じさせる睨みを飛ばすものもいた。再び険悪化した空気に慌ててシュミットがそれを引き起こしたロンを制止しようとするが、視線の温度をそれまでより大幅に低下させたシュウがそれよりも早く口を開く。
「おためごかしは結構だ」
「なんだと?」
「心にも無いことを言わなくていいと言ったんだよ、そんなことだからあんたらは人気が低いんだよ、《血盟騎士団》なんかと違ってな」
「は……何を言ってやがる、連中と俺達で何が違うっていうんだよ」
気に障る発言だったのか、特にシュウが台詞の後半出した《聖竜連合》と同じく最前線で活動するトップギルドの一つ、《血盟騎士団》の名に反応し、やや気色ばんだ様子を見せロンが
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