六話 攻略組
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られる敵意の視線を気にも留めず、シュウは続ける。
「装備の強化?あんたら攻略組のプレイヤーに見合う装備に加工できる代物はここならレア鉱石ぐらいなものだろう、だったら奥の良質なオブジェクトが湧くエリアだけに絞ってもいいはずだ、ダンジョン全域を独占しようなんて、度が過ぎている。レアリティの低い鉱石なんかあんた達の役には立たないだろう?……ああ。いや、そうか」
溜め息を吐きながら言葉を一旦切り、今気づいたというような声を芝居がかった仕草で上げるシュウ。瞳は動じさせず、口端を僅かに持ち上げた冷笑を浮かべて淡々と言葉を紡いでいく。
「そういえば近頃は金属の相場が値上がりしてるそうだな、中層プレイヤーが増加してきたせいで供給が追いついていないんだったか。鉱石素材を売りさばいて儲けるには丁度いいタイミングだ」
シュウが口にしたその話題に相対する男の表情が険しく歪む。背後の面々も言われんとしていることを察したのか数人の男が気まずそうにして身じろぎする様子が見える。
「ここで一日掘りまくればレアを除いても相当な量の鉱石が採れる。ましてやダンジョン全体分ともなれば相当な稼ぎになるな。だが一般プレイヤーを妨害してまでそんな荒稼ぎをしたと知れたら――さぞかしギルドの評判は落ちるだろう、新聞を出してる情報屋あたりが食いつきそうなネタだ」
情報の横流しをほのめかす発言に男や《聖竜連合》の面々の顔に焦りが覗き始める。トップギルドとして名を馳せる彼らだけにギルドの悪評が広まることは忌避すべき事態のはずであった。
彼らが攻略の為という建前の裏で過剰な利益を得ようとしていたことを察した後方のキョウジら、中層プレイヤー達の間に漂っていた諦めの気配も、次第に連合側を非難するような険悪なものへ変化していく。
「ってめぇ、そんなことしてタダで済むと思ってんのか!?」
連合の中でもいかつめの外見をした男が一歩踏み出し、腰に帯びた長剣に手をかけながらシュウを睨みつけ典型的な脅し文句を叫ぶ。が、当のシュウは。
「タダですまないのか?まさか《聖竜連合》ともあろうギルドがそんな犯罪者ギルド紛いの真似をするとは思わなかったな」
などと肩をすくめて言い返す。脅す素振りを見せたものの実際にそんな真似ができるわけがない男はぐ、と喉を詰まらせ、剣の柄を握るだけにとどまった。《聖竜連合》の知名度の高さを逆手にとって格上の集団相手に強気で責め立てるシュウに背後から見守っていたアルバは先程までの不満顔はどこへやら愉快気に笑う。
「くっくっ……性格悪っり」
「どっちが、っていうのは聞かないほうが良さそうだな……」
トールとアルバのそんなやり取りを背にしながら、シュウは大分空気の変化したその状況を終わらせるべく再度口を開く。
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