第二章
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「もうね」
「うちで飼うんだ」
「捨てる訳にもいかないでしょ」
一度拾ったならというのだ。
「それなら」
「御免」
「いいわよ、じゃあね」
母は息子にあらためて言った。
「お風呂に入りなさい、それでね」
「それで?」
「その子も入れてあげなさい」
その猫も見て言うのだった。
「いいわね」
「猫も」
「濡れてるだけじゃなくて随分汚れてるでしょ」
「だからか」
「そうよ、お風呂に入れてあげて」
そしてというのだ。
「奇麗にしてあげなさい」
「それじゃあ」
徹も頷いた、そして薄汚れた灰色に見える小さな猫と共に風呂場に向かった。その暫く後でだった。
猫と共に風呂場に出てだ、徹は母に言った。
「こいつ白猫だったよ」
「そうね」
見ればその通りだった、白猫で目は白い。そして毛派が所々が出ていて癖のある感じであった。
その猫を見ながらだ、徹は母に言った。
「それで雄だったよ」
「そうだったの」
「名前白いからシロでいいよな」
「何かそのままね」
「そのままでいいだろ、けれど」
ここで徹はこうも言った。
「こいつ俺が拾ったから」
「それでなの」
「育てるな」
「わかったわ、ただね」
母は自分がと言う息子にこう返した。
「ご飯におトイレにね」
「そういう世話必要だよな」
「ええ、ブラッシングもあるし。それに」
「それに?」
「明日病院に連れて行きなさい」
母は息子にこうも言った。
「いいわね」
「病院?何でだよ」
「病気持ってるかも知れないでしょ」
だからだというのだ。
「それでよ」
「だからか」
「そう、明日大学が終わったら」
「夕方でもいいよな」
「明日アルバイトないでしょ」
「バイト朝で講義午後だよ」
その時にとだ、徹は母に答えた。
「講義四時に終わるよ」
「だったらね」
「講義終わったらか」
「すぐにその子獣医さんに連れて行きなさい」
「そうしないと駄目か、金餌とかトイレとかも俺が出すな」
「お金かかるわよ、特に病院の方は」
「いいさ、どうせ大したことに使わないしな」
実際この二ヶ月徹は金をあまり使っていない、親友の死にショックを受けて遊ぶことなぞ考えられなくなってだ。
それでだ、こう言ったのだ。
「いいさ」
「そうなの、けれど足りないならな」
「お袋が出してくれるのかよ」
「そうするわね」
「別にいいのに」
「獣医さんはお金がかかるからよ」
こう息子に言った、そのうえで猫をまた見たがシロと名付けられたその猫は毛はともかく目が気になった。
随分目つきが悪かった、藪睨み目で黒い瞳も小さい、その目が随分気になったが徹がここから立ち直るかもと思いそれに拾ったならと第一に思い飼うのをよしとした。
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