逆さ磔の悪魔
シークレットボトム
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度か繰り返してようやく、最期の間に入った。
「元帥とその秘書艦、それ以外はこの部屋の中にある物を知るべきではない。逆に元帥と秘書艦は知らなければいけない物が、これだ」
壬生森が指した先、飾り棚に紫の布を被せてある何かがある。
三条河原はその物体を見た瞬間に、脂汗が出るのを感じた。
これは、まずいものだ。
「待ってくれ」
壬生森が布を取ろうとしたところで、三条河原はそれを止めた。
直感でそう思ったのだ。
隣にいた霞すら、絶句して青ざめている。
「そいつを知ったら、戻れなくなる気がする」
「あぁ、元帥しか持つことの出来ない、これを持った者は元帥でいられない、そういうものだ。核の発射ボタンよりも、危険な物かもしれないな。内務省すらこの存在を知らないほど秘匿されている、最期の手段だ」
「……て」
「『蒼征』、アンタはこれを……使ったことがあるな?」
「……めて」
「あぁ。そして霞、君の左腕もこれのせいで失ったと言っても」
「やめて!」
霞がたまらず、額を押さえて踞りながら叫ぶ。
そうだ、やはりだ。
「あの決戦、アンタはこれを使ったんだな?あの日起きた異常、そのひとつがコイツの仕業!そうなんだな!?」
霞が左腕と親友を失くした海戦、それこそが壬生森が一瞬だけ元帥として戦った最後の海戦で、全てが異常の混乱の内に決着した、詳細が一切明かされない海戦。
その異常の原因のひとつがこれだと言うなら、何をする代物かも想像が付く。
元帥が艦隊を持つことを禁じたのも、これがあるからだ。
「なぁ、ひとつだけいいか?」
「ひとつと言わずに全てを訊くべきと思うが?」
「アンタは、これを使ったことに……後悔はないな?」
「必要なものだった。その判断に後悔はないよ」
にべもない。
そこだけは確固たる意志をもって、壬生森は答える。
「もうひとつ」
「なんだね?」
「理想の元帥は、これを躊躇いなく使う覚悟を出来る者か?これを絶対に使わない覚悟を出来る者か?」
「どちらでもない。これを前に目を背けず向き合い続ける覚悟がある者だ」
壬生森の言葉に、三条河原は頷いた。
「霞、アンタも秘書艦なら立ち上がりなさい」
壁を背に寄り掛かって、飴玉を口の中で転がしていた叢雲が言う。
「アンタの左腕がなくなったの、確かにきっかけはこいつのせいだけど、一番の原因はそうやって踞ってるアンタの弱さよ。庇われて、守られてるだけなら秘書艦なんて辞めなさい。今度はアンタ達が覚悟する番よ?」
「好き放題言うじゃない……!」
「言うわよ。私は今日までのアンタなんだから。私は明日からアンタが背負う覚悟を、今の今まで背負ってきた先達よ?」
ふ
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