逆さ磔の悪魔
シークレットボトム
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れば片手間であっさり片付くものだ」
ひどい言い種だ。
この狐の身勝手さと偏狭さには閉口する。
普段からギリギリの量の事務処理に追われているところをパンクさせようとしているのを、自覚していないらしい。
「『蒼征』、それはブルネイやここが普段は暇だとでも?貴方のやっていることは」
「泣き言を言えるとでも?それを他の省庁に聞かれでもしてみろ。書類の束が倍の厚さになるぞ」
壬生森の目は、明確にこちらを睨んでいた。
「今回の一件、内務省も政府中枢もオカンムリだ。何しろ、そっとしておけば吐き出す利子で暮らせる豚の貯金箱を外から勝手にトンカチで叩き割った挙げ句に中身の元本を持ち逃げしたんだ。君達への制裁が書類詰めと今回の災害特別予算の否決で済んでいるだけ感謝してほしいね」
まるで、それが自分の手柄だとでも言わんばかりに語る壬生森の態度は、なかなか苛立たしい。
海軍の鼻摘み者、魚釣島に引き籠ってることしか誉めるところがない、だの言われる性悪狐の姿がそこにあった。
「最初は内務省も息巻いていたのだ。『ブルネイの首をスッ跳ねる方法を考えろ!迅速に!見せしめになるように!』とね。もちろん、やれば出来るだろう。ただ、やったらどうなる?」
ざっと考えただけでも、事態の大きさと余波は想像しきれない。
なにしろ、内務省が軍閥化の疑惑を常に向けるくらい、あの鎮守府は独立独歩しているのだ。
その独立独歩を可能とする権力を与える際に、ある一定ラインを越えたら内地からの支援は打ち切ることと、内地に特別な支援を必要とした場合はその権力を全て凍結すると取り決めたかつての官僚達の保険がここにきてようやく効いていると言える。
ブルネイが内地に特別支援を要請したら、ただちに内地から直々に乗っ取りにかかるだろう。
それほどまでに内務省は自分が手を出せない場所があることを気に入らないのだ。
「やれても大混乱、仕損じれば国が滅ぶ。溜飲ひとつ下げるだけのことで、こんなことがやれますか?と。だったらせいぜい、ブルネイに稼げるだけ稼がせたあとにもぎ取るほうが堅実だ。結果、ブルネイは大稼ぎしたあとに他の被害を被った鎮守府の支援に散財することになった訳だ。それを差っ引いてもどうやら繁盛したらしいがね」
自分のメンツと国体維持、このふたつを当たり前に天秤にかけるような内務省の動きを差し止めたのだ。
なるほど、確かに凄いことをしたかもしれない。
だがしかし、だ。
「内務省こそ思い上がりもいいところだ。自分達がこの国の中枢だと思ってやしないか?」
「それが内務省の目標だからね。未曾有の混乱を乗り切るには、この国をひとつにまとめて率いるスーパー官庁が必要。その考えのもとに組織されてきている。深海の世紀に戦っていたのは、海軍だけではなかったん
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