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私には要も急もある 羽田涼子VS新型ウイルス感染症
私には要も急もある 羽田涼子VS新型ウイルス感染症
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バイト先に電話した際、雇ってくれそうな感触があったものの、濃厚接触者として自宅待機になったことを正直に伝えた翌日、断りの連絡が来た。もちろん、こんなことは結衣には話せない。さらに罪悪感を持たせてしまう。

「だから、もういいんだって。不要不急の無職はずっと引き篭ってるよ」と自虐的に言う結衣に私はとっさに、
「私には要も急もあるよ」と言った。
「……何言ってんの?」
「私が急いでここに来たのは、結衣が必要だからだよ」
「ちょっと、そういうのいいから、やめて。映画でもそっち系のジャンルは好きじゃないし」
「家にね、トイレットペーパーとティッシュが残りわずかになったとき、すっごい不安になった。翌日、朝からスーパーに並んでなんとか手に入れた物を自宅に持ち帰って、それを見てたら安心できたんだ。私は夢とかないし、情熱を注げる趣味もない。旅行会社の内定も正社員として就職したかっただけ。そのほうが安定してるし、両親も安心させられるから」
「何が言いたいのか、さっぱりなんだけど」
「だから、結衣と一緒にいることは私にとって安心なの」
「トイレットペーパーみたいに?」と返してくる結衣。電話の向こうから微かに笑いが漏れるのを聞いた。
「あ、いや、そうじゃなくて。そうじゃなくもないんだけど。何言ってんだろ。とにかく、私が安心したいから顔を見せて。私のわがまま聞いてよ」

 沈黙が続く。私の言っていることは支離滅裂だ。言いたいことの半分も言葉にできていない。だが、たいてい結衣は私の言わんとすることを汲み取ってくれる。今回もきっと伝わったはず。

「涼子の言いたいことはわかったよ。だけど、こっちのわがままも聞いてくれるかな。私は何も要らないんだ。トイレットペーパーとティッシュもさっきどっちも切れちゃったけど構わない。テレビでバカなコメンテーターが新聞紙を使えとか言ってて、そのとおりだと思うよ。家に新聞は無いから映画のチラシでも使おうかな。私は映画にとって要らない存在みたいだし。あ、でもチラシはツルツルして使いづらいかも。フリーペーパーなら大丈夫そう」
「なんでそんなこと言うの……」

 泣きたくなってきた。そんな冗談は聞きたくないよ。

「あと陰性って言ってもね、また陽性になることもあるんだって。小康状態ってわかる? そこからまた再発する可能性もあるんだよ」
「そのときはまた治療して……」
「なんかもう疲れた。隔離されるのってきっついよ。今度、再発したらどうしようかな。街に出て、色んな人と触れ合ってウイルス撒いちゃおうか」
「バカなこと言わないで!」

 私は語気を強めて言った。結衣への説教のためではない。普通に腹が立ったのだ。

「そんなキャラじゃないよね! 去年、一緒に『ジョーカー』を見に行ったときのこと、覚えてる? 私が主人公
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