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私には要も急もある 羽田涼子VS新型ウイルス感染症
私には要も急もある 羽田涼子VS新型ウイルス感染症
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ウイルスの感染状況や社会影響をひたすら調べた。調べるほどに不安が増すが、自分を取り巻く状況を把握しなければ。どうせ無職だ、時間はある。
気づけば深夜を回っていた。いまの状況が続けば私はどうなってしまうんだろう。とりあえず何かバイトを探せばいいやくらいに思っていた自分の愚かさに、今更ながら呆れる。実家に戻ろうか。だが、せっかく学費を出してもらって卒業した直後に戻ることには気が引けた。お父さんとお母さんのことは心配だから、一応、実家には明日電話してみよう。まずやるべきことは日用品の確保だ。
寝不足と花粉症で重たい瞼を指で擦りつつ開店を待つ。暖冬でも朝は寒い。スーパーが開く七時より一時間前に行ったのに、もうすでに行列ができていた。年配が多かったが、自分のような若者の姿も目につく。
「開店は七時です! お寒い中、申し訳ございませんが、あと二十分ほどお待ちください! また品薄により、マスク、トイレットペーパー、ティッシュはお一人様、合計で一つまでとさせていただきます!」と店長さんらしき男性が声を張ってアナウンスする。
今日は私もマスクをしている。部屋を引っ掻き回したら、去年風邪を引いたときに買ったマスクが出てきたのだ。十枚もあったから心強い。今日、マスクの確保は難しいだろう。目指すはトイレットペーパーとティッシュだ。店によっては、整理券を配るところもあるらしいが、ここでは導入していない。開店と同時に争奪戦だ。気を引き締めなければ。
扉が開いた。通い慣れた店だが、開店の瞬間を見るのは初めてだ。
「押さないでください! 落ち着いて行動してください!」と店員さんたちが叫ぶ。誰も聞いていない。皆、雪崩れ込んでいく。こういうのは新年の福袋セールで何度も経験済みだが、違うのは皆の表情。笑顔はなく、焦りの色しかない。自分も同じだろう。後ろから突き飛ばされるように入店した私は目指すべきコーナーへ向かった。
「うん、今日の朝から並んでなんとか買えたよ。だから大丈夫。そっちも余裕はないんでしょ。送ってこなくていいから。仕事のことも心配しないで。前のバイト先に戻れるかもしれないし。あそこはオンラインゲームのカスタマー部だから、ウイルスの企業影響もあまりないんだって。お父さんにもよろしく言っておいて。じゃあね」
戦利品を前にお母さんと電話で話した。向こうでも品薄だと言っていた。それに、こっちよりも向こうのほうが感染者数が多く、学校はほとんど休校らしい。パートで専門学校の事務職に就くお母さんも休校のために自宅待機を余儀なくされている。とはいえ、両親が健康だと知ってほっとした。そして、目の前の獲得物。トイレットペーパー十二ロールとティッシュは大きめの四〇〇枚入り一箱。足を踏まれ、肩を掴まれした戦いの末、手に入れた。これらを眺めるだけで安心でき
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