第二章
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大輔は自分の両親を時間があれば見舞った、二人共病院は嫌いで家にいたが二人の傍にいつもだった。
キャリーがいた、キャリーは雄猫である。鼻から顔の下から腹にかけての部分と尻尾と前足の先が白い以外は全て黒だ。その彼がいつも両親の傍にいてくれているので大輔はいつも両親に笑顔で話した。
「キャリーは今も一緒にいてるね」
「ああ、有り難いよ」
「キャリーは本当にいつも傍にいてくれてるわ」
両親は息子である彼に笑顔で答えた、笑顔だが二人共年齢と病気の為もうすっかり衰えてしまっている。
「そのことが嬉しいわ」
「わし等を本当の親みたいに思ってくれているのかもな」
「私達はもう長くないけれど」
「キャリーがいてくれるからな」
それでというのだ。
「幸せだよ」
「この子がいてくれるだけで」
「それは何よりだね」
「それでな」
「いいかしら」
二人で自分達の息子に言ってきた。
「頼みがあるんだが」
「いいかしら」
「キャリーのことだよね」
何のことかはわかった、それで大輔もすぐに応えた。
「そうだよね」
「ああ、そうだ」
「私達がいなくなったらお願い出来るかしら」
「キャリーを引き取ってな」
「最後まで面倒を見てくれるかしら」
「そのつもりだよ」
大輔は自分の両親に笑顔で答えた。
「最初からね」
「そうか、じゃあ頼むな」
「キャリーのことお願いね」
「うん、そうさせてもらうよ」
「わし等の傍に最後までいてくれると思うしな」
「だからね」
二人は大輔に切実な声で頼み込んだ、そして大輔もそのつもりでいたし自分の子供達に話してもそれならと頷いてくれた。それでだった。
大輔はキャリーにも笑顔で言った。
「何かあったら一緒に住もうな」
「ニャア」
キャリーは両親の傍を離れない、だが大輔に頭を撫でられて嬉しそうに鳴いた、キャリーは大輔にも懐いていたのでそのこともよかった。
程なくしてまずは癌だった父が世を去りそれから一年後ですっかり弱っていた母も心不全で世を去った。そうして。
両親を見送った後で大輔は妻にあらためて言った。
「じゃあな」
「キャリーはね」
「うちで引き取ろうな」
「そうしましょう、ただお家は」
千春は義父母がキャリーと住んでいた家のことも話した。
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