暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第24話:歌をあなたに、演奏を君に
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情からは少しだが苦痛が取れたような気がした。まだ歌う事に対する抵抗などは残っているだろうが、それでも透の演奏が僅かながらクリスの心の癒しとなっている事は確かなようだ。

 夢破れた少年を癒す為の歌と、罪に苛まれる少女を癒す為の演奏。
 互いに互いを思い遣る、しかしそれでいてどこか悲し気な2人だけの演奏会。

 その2人の様子を、フィーネは離れた所からじっと眺めているのだった。




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 そして現在に至る。フィーネのお仕置きと言う名の拷問で体力を消耗しきった透を部屋に連れていったクリスは、ベッドの上で泥の様に眠る透の手を沈痛な面持ちで握り締めていた。

 彼女が考えている事はただ一つ、このままここに居て良いのかと言う事だ。
 フィーネには確かに恩がある。天涯孤独となっていたところを引き取って衣食住の世話はしてもらったし、必要な教育も少しスパルタだったが受けさせてくれた。
 これから先普通の学校に通う事になっても何の問題も無いだろう。それに何より、透を受け入れてくれたことは彼女にとって何よりの僥倖だ。

 ただ、何時の頃からかフィーネからの透に対する当たりが強くなってきていた。
 具体的に何時だったかは定かではないが、気付けばフィーネは透に対して辛く当たる事が多くなり、今回ほどではないが透に対してはかなり厳しい罰を与えることも増えてきていたのだ。

 透もフィーネからの接し方がきつくなっている事には当然気付いていた。
 だが彼はそれに気付いていながらも、何故かフィーネに対して出会った当初から変わらぬ態度で接していた。
 例えどんな罰が与えられようと、彼は一切気にした様子も無く、時にはフィーネに食って掛かろうとしたクリスを宥めていつも通りを貫いていたのだ。

 今までは彼がそう言うならばと、クリスは留飲を下げ続けてきた。

 だが今回は流石に我慢ならなかった。先程のあれはいくら何でもやり過ぎだろう。確かに透をここに置きフィーネの協力者とすることを提案したのはクリスの方だ。

 しかし、いやだからこそ、手を貸してくれている透に手を出すのはお門違いと言うものではないだろうか。クリスが罰せられるならばともかく、透に手を出すのは今回に関しては間違っているとしか思えなかった。

 事ここに居たり、クリスはこのままフィーネの元に透と共に居るべきかと現状にかなり不満を抱き始めていたのだ。

 フィーネがクリスからの透に対する優先度を履き違えている事がここにきて大きく影響しだしていた。
 今のクリスにとってフィーネなどどうでもいい存在だった。いや、どうでも言いは流石に言い過ぎかもしれないが、フィーネと透どちらを取るかと聞かれれば迷いなく透の方を取るだろう。


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