暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第24話:歌をあなたに、演奏を君に
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 透がフィーネの屋敷に厄介になることになってから早くも数週間が経過していた。その間、彼は消耗していた体力を回復させ戦えるくらいにまでなると、早速フィーネの監督の下クリスと共に戦闘訓練などに明け暮れていた。

 その中で一つフィーネとクリスにとって予想外だったのは、透が意外と戦えたことだろう。
 彼曰く、ここに来る前に居た場所で鍛えられたという話だが、フィーネの見立てではそれだけでは済まないくらい彼は強かった。

 何しろネフシュタンだといい勝負をすることもあったが、接近戦に不得手なイチイバルだと一度近付かれたら透の方に軍配が上がるのが常であった程だ。

 フィーネは確信した。透には天性で戦士としての才能がある。これはますますいい拾い物をしたと内心で喜んでいた。

 透の価値はそれだけではない。
 彼はクリスを精神的に縫い留めておくのに最適だった。

 彼を屋敷に置いて数日もしない時点でクリスが彼に強く拘っていることは察する事が出来た。透はフィーネに恩義を感じている為そう簡単に離れる事はなく、そして彼をダシにすればクリスはそれまで以上に従順に動いてくれる。

 フィーネの思惑は確かに成功していた。
 だが成功し過ぎていた。フィーネは意識していない事だったが、クリスの中で優先順位がフィーネよりも透の方が上になってしまっていたのだ。

 その事にフィーネは気付くことなく日々は過ぎ去った、ある日の事だ。

〔そう言えばクリス、どうしてイチイバルを使う時以外は歌わないの?〕

 共に過ごすようになって数カ月が経とうとしていた頃、透は徐にクリスに問い掛けた。

 彼が知るクリスは良く歌う少女だった。

 捕虜になっていた頃は精神的に余裕が無かった為一度も歌う事は無かったが、それ以前は何もなくても良く歌っていた。
 それを聞いて透も共に歌うと言うのが2人にとっては当たり前の事だった。

 しかし、この屋敷で再会してからと言うもの、彼女はイチイバルを用いて戦う時以外は片時も歌おうとはしなかった。
 この数カ月の間は歌う事が出来なくなった自分に遠慮しているのだろうと思い、彼女の意を酌むつもりで何も指摘することは無かったが、数カ月経つ頃にはそれだけが理由ではないことに察しがついていた。

 対してそれを訊ねられたクリスは激しく動揺した。
 当然だ。今の彼女にとって自身の歌は忌むべき存在、例え透であってもその事に触れてほしくはなかった。

 結果、クリスは一瞬で険しい表情になり彼女にしては珍しく透に対して拒否の姿勢を見せた。

「あたしに、もう…………歌の事は言わないでくれ。本当はイチイバル使うのだって嫌なんだ」
「!?…………?」

 まさかの返答に透は目を見開き手にしていたペンが滑り落ちた。


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