『春』
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春はスキじゃない。体感的にはキライじゃないけど、学生時代の春は大キライだった。初っぱなから呼び出しくらうのが厄介だった。
染井吉野がキライ。だからそもそも学校の桜はキライ。毛虫まみれの葉桜もイヤでイヤで苛々の原因だった。
其の下を必ず通らないといけないのが苦痛で耐えきれなかった。
上には生きた毛虫。下には踏み潰されて中身が飛び散った汚い死骸の毛虫。
拷問でしかなかった。
酔っ払って、だらしない理性が露呈し、其れも保たれずに本能に移り変わってく花見中のオヤジ連中。
そんな気色悪いオヤジの餌食になるのは慣れなかった。
幼い頃の事でさえ嫌なビジョンが鮮明に浮かび上がる春。どうにか幸福な記憶を植え付けれないかと足掻く。
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