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戦国異伝供書
第八十話 鬼若子その二

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「よいな」
「これよりですか」
「あの城に向かい」
「そうしてですか」
「手中に収めますか」
「そうする、よいな」
 こう言ってすぐにだった、元親は五十の兵を率いて潮江城に急行した。すると城は彼が言った通りにだった。
 誰もいなかった、それで兵達は城に入って驚いた。
「まことにじゃ」
「誰もおらぬぞ」
「若殿の言われる通りじゃ」
「完全に空城じゃ」
「そうなっておるぞ」
 驚きこう言い合うのだった。
「まさかまことにとは」
「全て若殿の言われる通りじゃ」
「若殿恐るべきじゃ」
 こう言って元親を見る、その元親は。
 城に入るとすぐにだ、兵達に命じた。
「これ以上はないまでに大声で勝鬨を挙げよ」
「ここで、ですか」
「そうせよというのですか」
「勝鬨を挙げよと」
「そうじゃ」 
 まさにというのだ。
「よいな」
「それは何故でしょうか」
「ここで勝鬨は」
「それを挙げよとは」
「どういうことですか」
「敵に聞かせるのじゃ」
 その為にというのだ。
「我等の声をな」
「今戦をしている敵の主力にですか」
「彼等にですか」
「あえて聞かせるのですか」
「自分達の城が一つ落ちたことを」
「そのことを」
「そうじゃ、それでじゃ」
 そのうえでというのだ。
「思いきりな」
「そうされますか」
「では、ですな」
「それではですな」
「ここで大声で」
「勝鬨をあげよ」
 こう言ってだ、元親は自分も含めてだった。
 城の中で戦の場にこれ以上はないまでに勝鬨をあげた、そうして敵に対してその声を聞かせてだった。
 そのすぐ後にだ、元親は兵達に命じた。
「ではこれよりじゃ」
「どうされますか」
「勝鬨の後は」
「どの様にされますか」
「我等は今戦っている敵軍を攻める」 
 そうするというのだ。
「その戦に加わる」
「そうされますか」
「ここではですか」
「その様にされますか」
「この度は」
「戦に」
「そうする、ではすぐに兵を進めるぞ」
 こう言ってだった、元親は足を踏み入れその中で勝鬨を挙げさせた城から出てそこからすぐにであった。
 戦の場に向かった、先程の勝鬨で驚き怯んでいる敵軍は長曾我部の軍勢よりも多かった。それでもだった。
 怯んだところに元親が率いる軍勢五十だが新手に攻められてだった。そこから崩れてそうしてであった。
 本山家の軍勢は浦戸の方に退いていった、元親はそれを見てすぐに自分の周りに集まっていた家中の将帥達に話した。
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