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提督はBarにいる。
艦娘とスイーツと提督と・47
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 優しすぎるんだな、お前は。自分や仲間の命を守りたくて、その為には自分も仲間も強くなるしかないと考えて。そうして自分が嫌われてでもいいから仲間を強くして……何より自分が更に強くなって。

「……情けないですよね、こんな臆病な娘」

「バーカ、お前は自分を卑下し過ぎなんだっつの」

「……え?」

「考えてもみろ。お前がただ厳しいだけのクソみてぇな上司なら、誰も付いて来ねぇよ。お前の下に付いてる連中は、いつも『神通さん神通さん』ってすり寄って来てるじゃねぇか」

 そう。神通の周りにはいつも駆逐艦や軽巡だけでなく、彼女を慕う者達の笑顔が溢れていた。それは神通の厳しさが、自分達を思いやって敢えての厳しさであると理解しているからだ。ただただ厳しいだけの上司や指導者は、いつか必ず孤立する。

「胸を張れよ、神通。お前さんの厳しい訓練は、皆の血肉になってあいつらを守ってる」

「はい……はい………!」

「だから、もう泣き止め。俺ぁ女の涙に弱いんだ」

 さっきからボロボロ泣いてんだよ、神通。普段溜め込んでた物を吐き出したから、ダムが決壊したんだろうが。




「提督はイケない人ですね……女の子をこんなに泣かせて」

「泣いてた本人がそれ言うのかよ……だが、女を泣かせる様な男は嫌いか?」

「いえ、これは嬉し涙ですから……寧ろ、惚れ直しました」

「言うようになったな、こいつめ」

 うっすらと潤んだ瞳で笑いかけられて、ちょっとドキッとしたのは内緒だ。

「あ〜……それとな?神通」

「はい、なんでしょう?」

「実は……お前の下に付いてる連中から陳情が来ててな」

「陳情……ですか?」

「少しでいいから訓練の量を減らしてくれって、な?」

 その瞬間、先程までの儚げな美少女は消え去った。

「成る程、解りました。では訓練時間『は』減らしましょう」

「いや、あの、神通?時間減らしても中身を濃くしたら意味がーー」

「そんな軟弱な事を考える余裕があるという事は、まだ扱きが足りないと言う事ですね……ふふふ、楽しみです」

 そのうっとりとした恍惚の笑みは、どうみてもバーサーカーのそれだった。俺は心の中で合掌して、訓練に巻き込まれる連中の冥福を祈った。
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