第一物語・前半-未来会議編-
第十三章 抗いの行く先《3》
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しながら、濡れた地面に足を着く。
水が敷かれた地の上を歩ながら、黄森の隊員に構うなと右の手を斜めに出す。
セーランを囲むように並んだ隊員は、彼女を通すため円を裂く。開いた穴から眼前に見える日来の長に近づく。
ある程度の距離を置き、立ち止まり告げる。
「貴方もこりないわね日来の長」
「言ったろ、俺は粘り強い男だってな」
「告白の続き?」
「今回来たのはそういうのじゃねえんだ」
「なら何用かしら」
「死んでも構わねえって言うお前の長をぶん殴りに来た」
「貴方には関係無いでしょ?」
「あるね、だって俺は、あいつに死んでほしくねえんだから」
「ならどうするの」
「決まってら」
それは、
「覇王会として隊長であるお前を倒し、弱かったお前達に代わってあいつを助ける」
成程、と実之芽は思った。
これは覇王会として勝負することにより、宇天学勢院よりも自身から強いことを認めさせる。そうすることで、力があると黄森に証明でき交渉の余地を確保する気だ。しかもそれが、屈指の実力者が務める覇王会隊長ならば黄森も無視は出来ないだろう。
だが、これには問題もある。
それは、
「もし貴方が負ければ日来の存在価値は更に下がり、交渉の余地は無くなるわよ」
「そうなったら困るから全力で戦う。どうだ? ここであんたが勝てば辰ノ大花の存在価値が上がる他に、黄森との交渉が上手くいくかもしれないぜ?」
ここで実之芽が勝てば、宇天学勢院の学勢は日来を抑えることが出来ると証明出来る。
他国との戦闘が何時行われるか分からない状況で、辰ノ大花の一地域で日来と言う地域を抑えられるということは魅力的である。
そうね、と実之芽は考える。
黄森の隊員が見ているこの場で、力をアピールするなら絶好の機会だろう。
負ければそれはもう最悪な状況になってしまうが、ここで黄森に任せてしまえば、それは宇天覇王会隊長は負けることを恐れて力のある黄森に事態を任せ逃げた、となる。
そうすれば宇天学勢院ならず、辰ノ大花に関わる。
だから、ここは戦う一択しかない。
これを狙っていたわけね。
食えない人だ、と思う。が、それと同時に彼の能力の凄さに圧倒される。
雨の中、実之芽の正面に映画面《モニター》がを表示される。
『今雨のなか甲板からそちらを観察中。色々日来の長にいい具合に流されてるけど、どうしますかあ?』
「ハイテンションね御茶丸……」
その映画面には、丸眼鏡を掛けた少年が映る。
ため息を吐くが、後ろを確認はしない。
『おやおや無視でしか? あっ、やべ、寒いから口が回らなくて噛んじった。でしかじゃなくてですかですよ――』
「分かったから何か用?」
『はいはーい、ストレートに勝負するなら本気でですよ』
「ほんとストレートね、と
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