揺籃編
第十五話 ハイネセン帰還
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ういうことにしておくよ。すみません、中尉」
「いや、何もないならいいんだけどね」
6月30日17:00 ジャムジード星系、戦艦ユリシーズ
ヤマト・ウィンチェスター
チヒル・ミナールに着いたと思ったら、次の日にはさっそくハイネセンに向かわなきゃならんとは…。
ハイネセンまでは十二日。
エル・ファシルでの出来事は、俺にとってすごく苦いものだったけど、一つだけ朗報?救い?があった。
アルレスハイムに哨戒に出ていたエル・ファシル警備艦隊、第2分艦隊の残余四十隻がユリシーズを先頭に戻って来たのだ。アルレスハイム方面の哨戒に出ていた彼等は、特に任務変更を受けることなく哨戒を続けていて、第2分艦隊司令部や地上作戦室との連絡が途絶したのを不審に思い、エル・ファシル星系に戻ったところ、警備艦隊が全滅した事、リンチ司令官が囚われた事、民間人が脱出した事を知ったのだという。
要は忘れられていたんだけど、無事でよかった。
タイミングがずれていたら、彼等も捕虜にされていたかもしれないのだ。ちょうど第1艦隊と帝国軍が睨み合いをしている最中で、彼等は助かったらしい。
で、その彼等、第2分艦隊の残余もハイネセン向かうというので、俺達も便乗させてもらっている。
チヒル・ミナールの基地を出る時、辞令を貰った。士官学校編入の辞令だ。今考えてみると、コピー用紙の規格って、地球時代から変わっていないんだよな。辞令書の入った封筒もA4版用、いろんな資料もA4版が多い。当然のように使っていたから、今まで気がつかなかった。個人携帯端末だって、当然のようにそう呼ばれている。便利な物は多少形は変わっても残り続ける、ということか。
それはさておき、士官学校か…。
「ヤン中尉、士官学校ってどんな所です?」
「士官学校?懐かしいな。懐かしいといっても一年ちょっと前までそこにいたんだけどね。そう、懐かしいな…私は戦史研究科にいたんだが、途中から戦略研究科に転科したんだ」
「戦史研究科は廃止になったんですよね」
「そうなんだよ。あれは残念だったなあ」
「戦史を学べば、戦いの原因から結果、総括までいけますからね」
「そうそう、戦略研究科でも戦史について学ばない訳ではないが、艦隊シミュレーションが大半を占める。確かに艦隊シミュレーション、戦術は大事だけどね、まずは戦いの方針というか、何を目的として戦うのか、の方が大事だと私は思うね」
「シミュレーションがお嫌いなのですか?」
「嫌いではないよ。好きか嫌いか、ではなくて嫌いではない、だね」
確か戦略研究科は人気ナンバーワンの課程なはずだ。士官になって艦隊指揮官、宇宙艦隊司令長官、統合作戦本部長を皆が夢見ると聞いている。確か同期首席のマルコム・ワイドボーン氏をシミュレーションで
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