揺籃編
第十五話 ハイネセン帰還
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友と言えば、ジャン・ロベールとジェシカくらいなものだ。あとはキャゼルヌ先輩やアッテンボロー
…。結果としてきつい任務になったが、ウィンチェスターとバルクマンという知己が出来た。
…軍隊は不条理の塊だ。なぜなら一個人としての評価と、軍人としての評価は別だからだ。優秀な軍人が、個人としても優秀な人間、と言うわけではないんだ。こいつとは友達づきあいなんて無理だな、なんて同期や部下、上官は不幸な事に沢山いる。この先どうなるかは分からないが、彼等という存在を大事にしていきたいものだ…。
「はは、本人を目の前にしてはそりゃ言いづらいか、悪かった悪かった。…ウィンチェスターはどんな事を訊かれたんだい?」
「そうですね…私の聴取担当官の方はジャムジード警備艦隊司令部の作戦参謀でしたが、何故下士官の私の発案がすんなり通って警備艦隊司令部が動いたのか、ということに納得がいかなかったようです」
「なるほど。それはそうだろうね、私が思ったくらいなんだから。で、なんて答えたんだい?」
「正直に答えました。以前にも思いつきが取り上げられた事があった、だから今回もそうしたんだ、って答えましたよ」
「ははは、でもその答えだと担当官は納得しなかっただろう?」
「はい、でも、軍の任務に民間人を護る事は含まれていないのですか、次善の策を考えて戦いに望むのは当たり前ではないのですか、端的に言えばそういう事を上申したまでです、と言ったら黙ってしまいましたよ」
「確かにそうだね。指揮官としては戦いに勝つ事がベストだ。でもそうはならない時の事を考えることもとても重要だ。勉強になるなあ、広い視野、理想と現実ということかな」
「そうなんですかね。人として、軍人として、為すべき事は為す、ということを実行するのはとても難しいと実感しました…」
「…ヤマト、もう悩むのやめろよ。俺達は頑張った、そうだろ?」
「そうだな、オットー…」
6月29日19:30 ジャムジード星系、チヒル・ミナール、タフテ市中央区6番街、
レストラン『カミングオブスプリング』 ヤマト・ウィンチェスター
オットーの言う通りだ、もう悩むのは止めなきゃな。俺がグジグジしていても死んだ人は戻って来ないし、捕虜になった人が帰ってくる訳でもない。
考えてみると、指揮官ってすごいよな。戦闘中だけじゃなくて、普段からこういう事で悩まなきゃいけないんだから。ヤンさん、あなたにその覚悟はありますか?…まあ、今は無いだろうねえ…。
自分の決断が、相手を部下を、運が悪ければ自分の事も殺してしまう。ううう、悩むのは止めようと決めたのに、これからを考えると胃が痛くなりそうだ。
「…何か悩みでもあるのかい?」
「いえ、大丈夫です。オットー、お前が変な事言うから中尉に心配させちゃったじゃないか」
「…そうだな。そ
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