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戦国異伝供書
第七十九話 初陣その八

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「そうなられるやもな」
「ううむ、そこまでの方ですか」
「わしが思うにな、若しかしてこの四国に来られるやもな」
「我等が四国を統一する前に」
「そうも考える」
「それは」
「幾ら何でもと思うな」 
 弟の目を見て問うた。
「そこまでは」
「あえて申し上げますが」
「そうじゃな、しかしな」
「兄上はそう思われますか」
「うむ」
 まさにというのだ。
「信じられぬと思うがな」
「では織田殿が」
「天下人になられるやも知れぬ」
「甲斐の武田殿か若しくは」
「武田殿はご自身も家臣の方々も素晴らしいが」
 それでもいうのだ。
「しかしな」
「そういえば武田殿は」
「越後の長尾殿と対されておられるな」
「長尾殿もお強いですな」
「近頃上杉家を継がれたというが」
「では上杉殿ですな」
「関東管領のな、その上杉家とな」
 武田家はというのだ。
「対しておられてな」
「それで、ですか」
「どうもじゃ」
 この家はというのだ。
「甲斐が都から遠いこともあり」
「天下人になられるには」
「織田家の方が近いやも知れぬ、織田殿はどうも武田殿以上に優れた家臣の方を多く擁しておられる」
「織田家もですか」
「それはきら星の如くという」
 そこまでのものであってというのだ。
「これはという御仁を見抜かれてな」
「そのうえで、ですか」
「用いておられる、例え若く身分が低くても」
 それでもというのだ。
「資質が優れていればな」
「それによって」
「それに相応しい地位にな」
「就けてですか」
「動かす、それが出来ておるからな」
 それ故にというのだ。
「あの御仁は違う」
「天下を狙える」
「そうなる、しかも尾張は豊かな国でじゃ」
「六十万石、土地は肥え人の往来は多く」
「商いもよいな」
「港にも恵まれていて」
「しかも美濃を抑えれば」
 そうすればというのだ。
「後を近江を抜ければな」
「すぐに都ですな」
「そうなる、もっとも武田殿も信濃を手に入れてな」
 そしてというのだ。
「後はな」
「美濃をですな」
「抑えれば都まですぐじゃが」
「それでもですか」
「信濃の道は険しく」
 山道だ、信濃は山が多く道もどうしてもそうなっているだの。元親はこのことについても言うのだ。
「その道を通るならな」
「尾張からの様にはいきませぬか」
「そうじゃ」
「しかも上杉家との戦があるので」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「武田家よりもな」
「織田家ですか」
「若しかして織田殿は」
 元親はこうも言った。
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