第八十二話 周泰、都に忍び込むのことその十
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「だからうち等もや」
「出番はないか」
「仕方ないわ。うち等はそういう運命の星の下にあるんや」
「おい、それを言うとだ」
「あかんか」
「本当に出番がなくなったらどうする」
怒った顔でだ。張遼に言う。
「只でさえ恋の方が目立っているというのに」
「あの戦闘力やさかいな」
「流石に恋には負ける」
華雄もだ。認めるしかないことだった。
「あの武芸はまさに鬼神だ」
「うち等二人同時でもあっさり負けるしな」
「あれでは。敵がどれだけ来ても」
「まあ負けへんな」
「では。やはり」
「出番ないかもな」
「仕方ないか。それも」
「まあ身体動かしてストレス発散しいや」
それはそうしろというのだった。
「それでゆっくり待っとくか」
「そうするか。それではな」
「そうしよか。それでその後でや」
「その後でか」
「酒でも飲もか」
その後はだ。それだというのだった。
「そやったらな」
「酒か。いいな」
「二人で楽しく飲もで」
張遼は明るい笑顔で華雄に話す。
「そういうことでな」
「うむ、では少し泳いで来る」
笑顔で話す華雄だった。
「それではな」
「そうするとええわ。それにしても」
「うむ。何だそれで」
「うち等今何処におんねん」
話が変わった。急にだ。
見ればだ。二人はだ。迷路の中にいた。
地下道が複雑に入り組んでいる。その中において話すのだった。
「気付いたらこんな場所にいたが」
「何で虎牢関にこんなのがあんねん」
「あれなのか。敵の侵入を防ぐ為か」
「いや、地下から来んやろ。脱出路にしてもおかしいで」
「では何の為にこの迷路はあるのだ」
「わからんな。とにかくや」
「ここを出なければな」
まずはだ。それだった。
「さもないと最悪の場合餓死だ」
「そうやな。出んとな」
「まあさか洛陽に続いているということはないな」
「それは流石にないやろ」
張遼もそれはないとした。
「そこまで広い迷宮っていうのは」
「洛陽から離れているしな」
「そこまではな。けれどそれでもや」
左右の壁と目の前の分かれ道を見てであった。
二人は眉を顰めさせてだ。それで言うのであった。
「はよ出んとな」
「うむ、確かに餓死してしまう」
「何でこんな場所に来たんやろな」
「気付けばだからな」
二人はこんな話をしながらだった。迷路の中を彷徨うのだった。
そうしてやっと関から出た時にはだ。次の日であった。二人にとってはまことに不幸なことであった。
第八十二話 完
2011・5・14
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