暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第23話:魔女と魔法使いの契約
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えてしまい、余計に言葉が口から出なくなる。

 クリスも気付かぬ内に、彼女の体は震え、体中に冷や汗が浮かび始める。

 呼吸も徐々に荒くなってきた彼女を見た透は、何かを察してペンとメモ帳を脇に置くと優しくそっと彼女の体を抱きしめた。

「ふぇっ!? と、透?」

 突然の彼の行動に戸惑うクリスだったが、彼は構わずにクリスを抱きしめると彼女の頭をそっと撫でた。
 無言の行動だったが、クリスにはそれが単純に安心させようとしているだけでなく、彼が彼女のこれまでの事を労っているように思えた。

 傍に居てあげられなくてゴメン、頑張ったんだね。もう大丈夫だよ────と。

 なんだか子供扱いされているような気がしなくもないが、それ以上にクリスは彼からの抱擁に安心感を抱き、気付けば彼に全てを委ねていた。
 体重を預け、彼の体に腕を回し抱き着く。それだけでそれまで何処か虚無感があった心が満たされていくのを感じた。

 気付けばクリスは静かに涙を流していた。

「う……ひっく、透ぅ──!?」
「…………」

 静かに涙を流し、嗚咽を上げるクリスを透は抱き締め続けた。
 それが今の彼女に出来る最大限の癒しであることに気付いたからだ。

 今の彼女はとにかく、他者の温もりを欲している。昔の様に歌う事の出来なくなった彼にとって、今できる事はこれだけだった。

 どれ程そうしていただろうか。不意に透の耳が、屋敷のどこかで扉が開閉する音を捉えた。

 その事に透は首を傾げ、クリスへの抱擁を中断するとペンとメモ帳を手に取り誰かが屋敷内に居る事をクリスに告げた。

〔誰か居る〕
「あ…………って、えッ!?」

 抱擁が止まったことに一瞬名残惜しそうな顔をするクリスだったが、透の記した内容が意味していることに気付き肝心なことを思い出した。

――フィーネに、何て言おうッ!?――

 言うまでもないがここはフィーネの館だ。つまり、ここに誰かを入れるにはフィーネの許可が要る。

 が、今回クリスはフィーネの許可を取らずに透を館の中に招き入れてしまった。

 その事でフィーネに咎められ、場合によっては『躾』をされる可能性もあったがそれよりも彼女が恐れているのは、最悪フィーネが透を排除しようとする事だった。
 何しろフィーネにとって透は完全に部外者、彼をここに置く理由がフィーネにはない。
 追い出されるだけならまだしも、フィーネの性格を考えれば彼を殺そうとする可能性の方が高かった。

 クリスは悩んだ。このまま透を隠し通すことは出来ない。あのフィーネの事だから、こっそり透をここに置こうとしても何処かで何かに気付いて見つけ出す可能性が高い。
 もしそうなった場合、勝手に部外者を招き入れたとしてクリスは仕置きと
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