揺籃編
第十四話 エル・ファシルの奇跡(後)
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宇宙暦788年6月10日19:30 イゼルローン前哨宙域、エル・ファシル警備艦隊、
旗艦グメイヤ アーサー・リンチ
「よし、敵A集団は第1、第3分艦隊に任せよう。本隊は反転、こちらに向かってくる敵B集団と正対する…」
「二時方向、新たな敵影!距離、約七百光秒。数は…現在千五百、徐々に増えていきます!…現在千八百、二千を越えました!」
「…オペレータ、反応の数が落ち着いたら再度教えてくれ。参謀長、反転中止。敵A集団は残りどれくらいだ?」
「はっ…およそ百隻前後かと思われます」
「参謀長、現在の状況で敵B集団との会敵予想時刻は?」
「三十分後だと思われます」
「…敵A集団を全力で撃破後、全艦十時方向に転進、その後八時方向に再度転進、ティアマト星系に移動する…残念だが撤退だ。参謀長、ティアマト星系進出後、味方の残存数を教えてくれ。…少し頼む」
「了解しました」
6月11日03:00 ダゴン星系、エル・ファシル警備艦隊第2分艦隊、旗艦アウストラ
ギル・ダウニー
「司令、FTLが入っております」
「分かった。自室で取る」
“教官、お疲れ様です”
「うむ。どうかね状況は」
”敵が再度増援を繰り出しました。三千隻の兵力です。敵残存兵力と合計するとおよそ四千隻になります。…現在我々はティアマト星系中心部にて再編中です。残存兵力は約千二百隻、残念です“
「艦隊戦を二連戦してそれだけの戦力を維持しているのだ、君はよくやっているよ。ところで現在エル・ファシルでは民間人の避難準備を進めている。私の独断だ。君の名前は借りたがね」
“…それはよろしいのですが、疎開ではなく、避難ですか?エル・ファシルから逃げると?”
「そうだ。民間人に被害が出てからでは言い訳が出来ない。軍は敗北も転進と言い逃れる事が出来るが、民間人はそうもいかないからな」
”では、我々が避難に必要な時間を稼ぐと?“
「そうだ。我々もダゴン星系に向かっている。微力すぎる兵力だがね」
“無茶ですよそれは!教官もお逃げください!”
「教え子をほっといて逃げるとでも思うのかね、私が」
”そうではありません、そうではありませんが“
「…今回の避難計画も、発案は例の下士官なのだ」
“…義妹の部下に居たという下士官ですか?”
「そうだよ。パークス先輩が言っていた。頬を思い切り叩かれた感じだったとね。目先の戦いに気を取られて、真に守るべきものを忘れていたと。確かに避難計画はある、だがそれは百年も前に策定されたもので実情にそぐわない。我々はそれを知っていながらおざなりにしていた。確かに遭遇戦闘の度に疎開や避難をしていたら市民生活に与える影響は大だ。だが下士官ですら危惧していることを、今ま
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