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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
揺籃編
第十四話 エル・ファシルの奇跡(後)
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言ってもここはダゴン星系だ。我々の大勝利の地、帝国軍にとっては忌まわしい記憶の地だ。
嫌がらせ程度でも慎重になるに違いない。

 「機雷の敷設、完了しました。敷設宙域の敵通過予想時刻は二時間後、かなりの広範囲に渡って撒きましたので、一発でも引っかかってくれれば儲けもの、といったところです」
「ご苦労。ところで、君には退艦してもらわねばならない」
「…まさかここでパーティ会場から退席を求められるとは思いませんでした…理由をお聞かせ願えますか?」
「若年者、妻帯者を中心に希望者を募っている。艦隊司令官の許可も得ている。死ぬと分かっている戦闘に、無理やり付き合わせるのも悪いからな。彼等を率いて避難計画に合流してもらいたい」
「了解しました、と言いたいところですが、拒否します」
「…何故だね?」
「司令にもしもの事あれば、この分艦隊を指揮するものが居なくなります。それに、次の第2分艦隊司令は私です。自分の艦隊を放っておいて逃げる指揮官などいませんよ」
「そうか、残念だな。では退艦者の引率はウインズ中佐に任せるか」
「はい。お願いします」
「…君に退艦して貰おうと思ったのはもう一つ理由があるんだよ。ウィンチェスター曹長達の事だ。士官学校に推薦しただろう?という事は君は後見人になるわけだが、後見人がいないのでは何かと不利になるかもしれない、と思ったのだ」
「大丈夫でしょう。命令とはいえ上官を見捨てて逃亡した者が後見人では、そちらの方が彼等に迷惑をかけるでしょう。多分彼等は大丈夫です。アッシュビー元帥の再来なのですから」
「そうか、そうだな。…艦隊司令官にFTL(超光速通信)を繋いでくれるか。君も聞いていてくれ」
「了解しました」



6月12日09:10 ダゴン星系外縁部(ティアマト星系方向)、エル・ファシル警備艦隊
旗艦グメイヤ アーサー・リンチ

 ”リンチ君、艦隊の状況はどうかね“

「…総数は六百四十隻ですが、現状で戦えるのは四百隻程度です、教官」

”そうか。では戦えない二百四十隻を私に呉れないかね?乗員は連れていきたまえ。無人艦として運用するのでね“

「…分かりました、置いていきます」

”ありがとう。では、教官として最後の授業だ。何が言いたいか、分かるかね?“

「部下を見捨ててはならない、だと思います。教官は常に仰っておられました。一将功成りて万骨枯る、と。武勲の影には無数の兵士達の死があるのだと。だからこそ、それを忘れて部下を見捨てるような上官になってはならないと」

”よく覚えていたな。正解だ。では、これからやる事は分かっているかね?…これを実践しろと言うのは私としては辛いが“

「…分かっています。私が死んでは、脱出したものが逃亡者として断罪されかねない。エル・ファシル失
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