揺籃編
第十四話 エル・ファシルの奇跡(後)
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で我々はやっていなかったのだよ」
”そう、ですね。忘れてはいない、でもどこかで軽く考えていたかもしれません…“
「今からでも遅くはない、我々は責任を果たさねばならないのだ。故に私は君に合流する」
“ありがとうございます。ダゴン星系中心部で待機してください。敵の動静を見つつ、我々もそこに向かいます”
「了解した。…済まないが、改めて地上作戦室に命じてくれないか。独断のままでは気分が悪くてね」
6月11日07:30 エル・ファシル星系、エル・ファシル、自由惑星同盟軍エル・ファシル基地
ヤン・ウェンリー
目の前の二人は談笑しながら朝食をとっている。食べながら話しませんか、とウィンチェスターが提案した。根を詰めて話し合ってもロクな答えは出ないそうだ。それもそうだなと、その提案に乗るバルクマンもバルクマンだが…。
年齢と釣り合わない識見と態度。さっきの話もそうだし、今も自然に落ち着いている。上官の私が言うのも何だが、信頼出来る何かがある。
「中尉、エル・ファシルは正確にはどれ程の人間がいるのですか?」
「ああ、軍民合わせて二百六十七万四千二百五人だ。その内軍人は三万五千人だ」
「中尉、いいですか」
「どうぞ、バルクマン曹長」
「バルクマンでいいですよ。その全員をどうやって集めるんです?」
「そうなんだよ。昨日合同庁舎に説明に行ったんだが、中々もって非協力的なんだ。なんかいい手はないものか…」
「さっきのヤマト…ウィンチェスターの話をすればいいんじゃないですか?歴史で習いましたけど、熱核兵器でドン、なんて地球時代の十三日戦争以来でしょ?かなりインパクトあるんじゃないですか。聞いててヒェってなりましたよ」
「…脅すのかい?」
「違いますよ、可能性の話ですよ」
「…ウィンチェスター曹長はどう思う?」
「俺もウィンチェスターでいいですよ。アリだと思います」
「そうか。では行くとしようか。まだ就業時間前だが、大丈夫だろう」
6月11日19:00 ティアマト星系外縁部(ダゴン星系方向)、エル・ファシル警備艦隊
旗艦グメイヤ アーサー・リンチ
敵の動きが妙だ。新しく現れた三千隻の敵艦隊こそが敵の本隊と思ったが、今まで戦っていた敵艦隊と合流する様子がない。着いては来るものの、非常にゆっくりだし、戦闘に介入しようという気配もない。
「参謀長、どう思うか」
「…新たな敵艦隊は敵の本隊ではなく、別の命令系統の艦隊ではないでしょうか」
「後詰、ということかね」
「こういう言い方が合っているかどうかは分かりませんが、心配になって見に来た…のでは」
「案外当たっているかもしれんな。だが、味方の危機は見逃すまい。戦闘準備は整えている、と考えるべきだろうな」
「はい。…敵の呼称を変更致し
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