第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第3話 好機
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
依姫とルーミアの弾幕ごっこは、依姫の勝利という形で決着がついたのである。
「勝負ありましたね。それではこの人間の子を襲うのは諦めなさい」
「分かったよ〜」
依姫に言われて、ルーミアは渋々だが承諾した。幻想郷に住む以上、そのルールは守らなくてはいけないのだ。
「問題は一先ず解決しましたね……後は」
そう言って依姫は人間の少女へと向き直った。そして続ける。
「もう日が暮れて来ました。今から人里を目指して行くのは危険です。なので今日は永遠亭に来るといいでしょう」
その言葉を聞いていたてゐもそれに便乗する。
「そうだよ、うちに来なよ。夕ごはんもご馳走するからさ」
願ってもない二人の提案を少女は受ける。だが。
「そんな、夕ごはんまでご馳走になるなんて厚かましいですよ……」
そう少女が言い掛けた時、タイミングよくクッションに深く座り込むかのような音が辺りに鳴り響いたのだ。
──腹の虫。いくら口では遠慮しても、肉体は正直なのであった。
「……」
暫し少女は赤面する。そして。
「私の負けですね。夕ごはん、ご馳走になります!」
「素直でよろしい」
そんな少女の対応に依姫も気を良くして微笑んだ。
そして依姫は思った。一夜とはいえ、これから同じ釜の飯を食う仲となるのだ。だから、しておかなければならない事があった。
「私は綿月依姫。貴方の名前は?」
そう、互いに名前を知っておくべきだと思ったのだ。
相手の名前を聞くときはまず、自分から名乗る、それが武士の心得である。
以前月ロケットで月にやって来た者達とは本気ではなかったにしろ、仮にも『侵略』を掲げていたため名乗り会う状況ではなかったが、普段初対面の者と関わる際に依姫は自分の名を語る事を心掛けているのだ。
名前を名乗るように言われて一瞬戸惑った少女だったが、すぐに取り直してはにかみながら言った。
「私は黒銀勇美です。よろしくお願いしますね、依姫さん」
そう言って、人間の少女──勇美はとうとう自分の名を名乗ったのだった。
「黒銀という名字ですか。変わっていますね。まあ私の『綿月』も地上の者には余り馴染みないかも知れませんが」
自分の事を棚に上げずに言いつつも、依姫はその珍しい名字に少々驚いていた。
白銀という言葉はある。そして黒鉄と書いて『くろがね』と呼びもする。しかし、黒銀と書いて『くろがね』と呼ぶケースは中々お目に掛かれないからだ。
だが、人の名前に執拗に絡むのは些か不謹慎と言えるもの。依姫はそれ以上の思考を止める事にしたのだ。
「それでは宜しくね、勇美」
「はいっ」
依姫に言われて勇美は笑顔で返事をした。やはり初めて名前を呼んでもらえるというのは嬉しい事なのであった。
「それで
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ