第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第3話 好機
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を使役しているしね」
そう依姫は説明しながらも、かつての宿敵の事を例に挙げている自分に心の中で苦笑した。
「それでも、そんな事したら罰当たりなのではないですか?」
「その辺も大丈夫よ。貴方が弾幕ごっこをしたい気持ちに邪なものはありません。だから神々も快く力を貸すでしょう」
「……」
依姫の主張に勇美は戸惑いが生まれていた。それは……。
「何故私のためにそこまでしてくれるのですか?」
その一つの疑問に理由が集約されていたのだ。
「それはね……」
当然の疑問を突き付けられた依姫は目をうっすらとさせ、次の言葉を紡ぐ準備をした。
「今の私があるのは、姉と師匠の存在があってこそだからよ」
そう依姫は続けた。
「お姉さんとお師匠さんですか……」
勇美は興味深そうに聞き返した。
「そう、要はこの二人の持つものが私に引き継がれていったというわけ。だから、今度は私が引き継がせる番、それが今だと思うのよ」
依姫から引き継がれる役割は本来は鈴仙になるのが流れだと思われていた。しかし、彼女は戦いを恐れて依姫の元から去る事を選んだのだ。だから無理強いは出来ない。
勇美はここまで聞いて、依姫の言わんとする事を理解し始めていた。だからこそ驚きもそれに合わせて膨れ上がっていったのだ。
「ほ、本当にそれが私でいいんですか?」
それが真っ当な理由だろう。たかだか一人間の一人でしかない自分が依姫程の力量を持った者から何かを引き継がれるなんて大それた話だから。
だが依姫は続ける。
「ええ、私は貴方を選ぶわ。これは私の神の力が他の人にどう使われていくのか興味があるからでもあるのよ。そして貴方は力を必要としている」
ここで依姫は一旦言葉を区切り、一呼吸置いた。そして続け、
「これは『お互いのため』なのよ」
と締め括った。
「お互いのため……ですか」
勇美は思わず聞き惚れてしまった。
『お互いのため』この状況でそう簡単には出てこない言葉だろう。よく自分のために『お前のためを思っているんだ』とエゴイストが好んで使うケースが多いものだから。
また『お互い』という言葉を持ち出す人でさえ、実際は自分の都合のいいように物事を運ぶ手段に使う場合も多いのだ。
だが、今の依姫はそのどちらのケースにも当て嵌まってはいなかった。お前のためだとも言っていないし、勇美の意思で断れる状況を作ってさえいるのだから。
故に勇美は思った。「この人は信頼出来る」と。
そして今、勇美の答えは決まったのだ。
「お願いします、私に神の力の借り方を教えて下さい、依姫さん」
「もちろんそのつもりよ」
この瞬間勇美の新たなる道の幕開けとなったのだった。
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