暁 〜小説投稿サイト〜
MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第3話 好機
[5/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
瞳に当てられた訳でもないのに。
 だが、決心は変わらなかった。もう一度会ってどうなると訳でもないのに。そして彼女はてゐの側まで来ていた。
「私をあの子──勇美の所まで案内して」

◇ ◇ ◇

 人里の一角にある、他と変わらない一軒の家。その外に勇美はいた。
「これで薪は全部集まったね。後はこれを慧音先生の所まで持っていけば……頼んだよ、マッくん♪」
 勇美は別に独り言を言っている訳ではなかった。話しかけている相手はちゃんといたのだ。
 それは人里では中々見ない物であった。──トラックの荷台にタイヤが付いたような造形をした、紛れもなく『機械』である。
 そして、勇美の呼び掛けに応えるかのように大量の薪を荷台に乗せた、『マッくん』と呼ばれた機械はエンジン駆動音を鳴り響かせると、タイヤを回転させ前進を始めた。
「うん、順調に動いてるね」
 問題なく起動した機械を見据えながら勇美は満足気に呟いた。後はこれを走らせて慧音先生の元まで──。
「黒銀勇美って子の家はここかしら?」
「うわっ!」
 突然自分の名前を呼ぶ声に勇美は驚いてしまった。それに合わせるかのように機械である筈のそれもエンジン音を止ませて前進を止めた。
「お久しぶりね勇美」
「あなたは確か、綿月依姫さんでしたよね?」
 そう、声の主は先程てゐに案内してもらってやって来た依姫のものであった。
「どうしたんですか、私に会いに来て?」
 竹林で助けてもらい永遠亭で一夜を共にしたものの、それだけの間柄になるかと思っていた所に会いに来てくれて勇美は嬉しかったが、その理由が分からないので疑問を口にした。
「いえ、特に理由はないのですけど、貴方の事が気掛かりでしてね……」
 そこまで依姫が言うと、すぐに目の前の異質なものに気がいく。
「ところで貴方、その機械は?」
 当然依姫の注意は先程までエンジンを鳴らして走ろうとしていたその鉄の造形物へと向いた。
「あ、この子は『マックス』。略して『マッくん』♪」
「……」
 依姫は絶句した。名前を聞いているのではないとか、自分で名付けておいてそれを略すとは八意様みたいだとか、そもそも文字数的に略されてはいないとか、突っ込みの句が脳内でミミズのように這い回るような名状しがたい事態に陥ったのだ。
「あ、ごめんなさい、意味不明でしたね」
 それを全てではないが察したのだろう、勇美は一先ず謝って仕切り直しをした。
「この子はね、私の能力で造ったの。私の能力はこの前話しましたよね」
 やはりそれしか考えられないだろうと依姫は疑問を頭の中で整理し直す。だが、それで全て解決はしなかったのだ。
「では、どうやってそれを動かしているのかしら?」
 問題はそこに行き着くのだ。勇美の能力では機械の生成と変型までしか行えず、作動させるに
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ