第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第2話 綿月依姫のスペルカード
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には奥の手が残されていたのだ。
「これが私のとっておきだよ、【闇符「ミッドナイトバード」】!!」
例によって、十字架のポーズでルーミアはスペル宣言をした。
だが、今回は様相が違っていた。彼女の体から、一際膨大な闇が煙のように吹き出してきたのだ。
そして、闇の煙ははっきりとした形を取った。
それはナイトバードと同じく鳥の姿であったが、徹底的に違うのはその大きさである。ダチョウ位の丈を持つ『怪鳥』と呼ぶに相応しい化け物だった。
「行きなさい!」
そしてルーミアの指令を受けると、怪鳥は勇ましく羽ばたいた。そして依姫目掛けて飛び掛かっていった。
(これは大きいですね)
依姫は心の中で呟いた。そして──これ程のスペルなら、『あれ』を試すいい機会だと踏んだのだ。
(狩猟の神『アルテミス』よ、我にその技巧の力を貸したまえ)
それは、『日本の神』以外の神を降ろす事であった。
八百万の神、それは文字通り800万柱もの神の事を指すのだ。そしてそれ程の数の神はさすがに日本だけが有してはいないのであり、世界各地の神々を含めるのだ。
そして、依姫が最初に選んだ日本外の神はアルテミスだった。その理由は直ぐに分かる事となる。
アルテミスを降ろすと依姫の側に半分人間の姿で半分獣の『獣人』というべき女神が現出し、その姿が消えると依姫の手にはエネルギーで出来た弓矢が備わっていたのだ。
その弓矢を構えて闇の怪鳥目掛けてキリリと弦を引く依姫。狩猟の女神が弓矢の使い方を依姫に伝えてくれているのだ。
「【猟符「月の狩人の一矢」】!」
スペル宣言と共に依姫は弦を弾き矢を放ったのだ。
そう、依姫が初めて降ろす西洋の神にアルテミスを選んだのは、『月』と関わりのあり、『弓』を得意とするのが、彼女が敬愛する八意永琳と共通する要素が多かったからであるのだ。
そして矢は目映い月の光を振り撒きながら怪鳥へ真っ直ぐ突き進み──遂にそれを見事に貫いたのだ。
油に洗剤を垂らしたように円形に穴が広がっていき、怪鳥は消し飛んだ。だが矢はまだ直進していたのだ。このままでは。
「避けなさい!」
「ひっ!」
依姫に言われてルーミアは悲鳴を上げて咄嗟にその場で屈んだのだ。その上を空気を裂きながら月の光の矢は通りすぎていった。間一髪の事であった。
「あ〜、びっくりした〜」
落ち着きを取り戻したルーミアは腰を上げて立ち上がった。
「どうしますか?」
「降参、降参〜。私の負け〜」
ルーミアの敗北宣言。──ここに依姫の地上での弾幕ごっこの初勝利が決まったのだった。
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